第2話

お父様との話
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2020/03/12 05:39
あなた

お、お、お、お、お父様ー!

たかし
たかし
どうした?
妖怪は20歳で成長が止まる。だから、私の父は若いままなのだ。
あなた

に、人間に姿見られちゃったよ!

あなた

どうしよう!

たかし
たかし
見られたと言っても…ただの着物を着ている女の子にしか見えないだろう?
たかし
たかし
なにを慌てているんだ?
あなた

ちがうよ!透明化の術をかけてたのに、見られたの!

たかし
たかし
なっ。それは本当か!
あなた

私がこんな悪趣味な嘘ついたことある!?

あなた

な、なんかまずいの?

たかし
たかし
まずいどころか…大変だぞ!
あなた

え、なんかやばいの?

父、たかしは焦った表情を見せ、待っていろと言って部屋に戻っていった。
戻ってきたたかしが持っていたのは巻物だった。
あなた

(妖怪の家って、やっぱり古いもの多いんだよなあ…。)

たかし
たかし
これを見てみろ。
あなた

うん。なになに…?

そこには、遠い昔のことが書かれていた。
たかし
たかし
私の祖父が作ったものだ。
たかし
たかし
人間の中には、私たちの術を破ってしまうものがあるらしい。
たかし
たかし
そして、妖怪を…倒す力を持つそうだ。
あなた

え…。

あなた

(私たちを…たお、す?)

あなた

ど、どういうこと?!

たかし
たかし
かつて陰陽師が栄えていた時期、平安時代にしていたらしいが…。
たかし
たかし
まさか俺の世代になってまた現れるとは…。
たかし
たかし
なあ、そいつはどこにいるんだ?
あなた

私が毎日言ってる交差点には、通学で毎朝通ってるけど…。

あなた

どうするつもり?

たかし
たかし
…消すんだ。残念なことだが…。
父の言葉に、慌てて反論する。
あなた

だっ、ダメよ!

あなた

わ、私の好きな人なのよ!?

好きになってしまった人間がいることは、前々から父に話してはいたのだ。
たかし
たかし
ああ、けれど、仕方がないだろう?
たかし
たかし
それとも、なんだ?
たかし
たかし
これ以上に良い案が思いつくとでもいうのか?
たかし
たかし
お前が妖怪たちを守ってやれるのか?
あなた

…とりあえず、彼と話してみるわ。

たかし
たかし
だめだ!危険すぎる!
父が机をドンっと叩いた。私を思ってくれているのだろう。父の表情は怒りに満ちていた。
たかし
たかし
それだけはだめだ!
たかし
たかし
私は王としてある前に、お前の父親なんだ!
たかし
たかし
お前を守る義務がある。
あなた

…わかったわ。

あなた

おかしなこと言って、ごめんなさい。

たかし
たかし
…いや、俺の方こそ、声を荒げた上に机まで叩いてしまって…。すまなかった。
にっこり笑って、仲直りをした後、私は部屋を出た。
あなた

(誰が諦めるものか!誰が諦めてやるものか!)

あなた

(大好きなあの人を、殺させはしない!)

人間に関わるのは禁忌。決して開けてはいけない、開かずの扉。
それでも私は、心を決めた。
あなた

(明日は金曜日…。明日の朝、彼と会って、話してみよう。)

彼を守るためなら、迷いなどなかった。
あなた

(父が彼を、消してしまう前に。)

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