第28話

解放
168
2020/08/11 13:59
 私たちは、幸助さんの後に続いて倉庫に向かった。だんだんと日が暮れて、暗くなってきている。私たちが動き出す時間だ。
松下 幸助
松下 幸助
ここだ。
松下 花
松下 花
開けますね。
松下 幸助
松下 幸助
1人では辛いだろう。手伝おうか。
私たちも、と、全員で大きな扉に手をかける。ギイイ、という音とともに、ゆっくりと倉庫の扉は開かれた。


 その奥には、妖怪達の魂が結晶となって綺麗に並べられていた。封印されれば飾れるほど美しくなるとは聞いたことがあったが、こういうことだったのか。
松下 幸助
松下 幸助
これだ。
幸助さんが、その結晶を下に置き、はあ、と、ため息をついた。
松下 幸助
松下 幸助
妖怪を解放するのはこれが初めてなのじゃ。失敗しても、恨むでないぞ。
ゴクリと唾を飲み込んだ。辺りに緊張感のある空気が漂う。

次の瞬間には、あたりは霧に包まれ、そして。
猫又の子供
猫又の子供
主様っ!
猫又の主
猫又の主
ああ、よかった……!
あなた

よかったわね。

猫又の主
猫又の主
本当に、本当にありがとうございます、姫様!
あなた

礼はいいわ。とにかく、その子にこれからのことを説明してあげなさい。

猫又の主
猫又の主
はい、わかりました!











そして、私たちは部屋に戻った。外はだんだんと寒くなっていたからだ。妖怪である私たちにはなんの問題もないが、人間達は風邪、というものを引いてしまうかもしれない。
猫又の子供
猫又の子供
そうか……うん。いいよ。
猫又の主
猫又の主
だ、大丈夫なの?
猫又の子供
猫又の子供
こればっかりは、仕方がないよ。自分で巻いた種だもの。
猫又の子供
猫又の子供
それに、悪いことばかりではないでしょ?
猫又の子供
猫又の子供
お金がもらえるなら、主様にプレゼントを買ってあげることだってできるんだよ。
猫又の主
猫又の主
まあ……かわいいことを言うのね。そうね。たまには様子を見にくるからね。
猫又の子供
猫又の子供
うん。ありがとう、主様。
猫又の主は、別れを済ませると、自然の中に帰って行った。
猫又の子供
猫又の子供
初めまして、姫様!
よろしくお願いします、陰陽師の皆様。
あなた

はじめまして。さくらとよんでね。仮の名前なの。

猫又の子供
猫又の子供
はい、さくら様。
松下 幸助
松下 幸助
色々と仕事を頼むと思うが、妖怪に関する仕事を頼むつもりはないから、安心しなさい。
松下 花香
松下 花香
おじいちゃん、優しいのね。確かに、妖怪に妖怪を封印する手伝いをしろとは言えない。
松下 花
松下 花
この人はね、案外優しいのよ。でなきゃ結婚なんてしなかったわよ。
松下 花香
松下 花香
おばあちゃんはおじいちゃんの優しいところに惚れたの?
松下 花
松下 花
そうよ。
松下 花香
松下 花香
……お母さんは?お父さんのどんなところに惚れたの?
松下 文花
松下 文花
……妖怪にも、優しかったところよ。
そう言うと、文花さんは泣きはじめてしまった。

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