どうして、感じたことのない妖力だったのか、やっとわかった。
取り込んだんだ、お父様。消えてしまいそうな妖怪を、自分の中に。噂を立たせてから、復活させられるように。だから、混ざり合って、新たな力が生まれてる。
文香さんが花香を守るように立ちはだかっている。
花香は、涼を気にかけてくれている。
涼は、私を心配して、危ないのに来てくれて……。
……なら、私のやることは。私は、何をすればいいの。
……なにも、思いつかない。わからない。私にできることって、何。
……あるじゃない。一つだけ、あるじゃない。これを使えば、時間稼ぎくらいはできる。誰も消えずに、死なずに済むっ……。
手に妖力をこめ、涼に渡す。涼も何かを受け取った感覚自体はあるようだ。それがあれば、私はたとえ何があったとしても復活できる。
長い長い時が流れて。インターネットと言う最新の方法を使って、妖怪の存在は世界に再認識されていった。
あの時、彼女は自分の持つ妖力を全て世界に浸透させることで、消えていきそうな妖怪達の揚力を継ぎ足した。ようするに、時間稼ぎをしてくれたのだ。
俺の中に託された妖力。それを使って、今から眠り姫を起こす。ずっと待ち侘びたこの日。
妖怪は名前によって縛られる。それなのに、どうして彼女が名前を教えてくれたのか、当時の俺にはわからなかった。けれど、彼女のお父さんが教えてくれてわかったんだ。妖怪は、伴侶となるものにだけ本当の名前を教えるんだって。
周りに誰がいようと、教えようと思った相手にしかその名前は聞こえないなんて、便利だよな。びっくりしたよ、俺にしか聞こえないなら、そう言ってくれって。
ま、とりあえず起こそうかな。久しぶりに、君に会えると思うと、飛び上がりそうな気分だよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。