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第43話

妖力の正体
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2021/08/03 12:17
どうして、感じたことのない妖力だったのか、やっとわかった。

取り込んだんだ、お父様。消えてしまいそうな妖怪を、自分の中に。噂を立たせてから、復活させられるように。だから、混ざり合って、新たな力が生まれてる。
花島 涼
花島 涼
さく、ら……。
文香さんが花香を守るように立ちはだかっている。
花香は、涼を気にかけてくれている。
涼は、私を心配して、危ないのに来てくれて……。

……なら、私のやることは。私は、何をすればいいの。
たかし
たかし
こうしている間も、仲間達は続々と消え続けているんだぞっ。
……なにも、思いつかない。わからない。私にできることって、何。

……あるじゃない。一つだけ、あるじゃない。これを使えば、時間稼ぎくらいはできる。誰も消えずに、死なずに済むっ……。
あなた

涼、これ持ってて。

あなた

全部解決したら起こして。

花島 涼
花島 涼
え……。
 手に妖力をこめ、涼に渡す。涼も何かを受け取った感覚自体はあるようだ。それがあれば、私はたとえ何があったとしても消えてしまったとしても復活できる。
あなた

文香さん、みんなをお願いします。

あなた

花香、涼を取ったら嫌よ。

あなた

お父様、私、絶対やり遂げるから、嫌いにならないでね。

あなた

涼、私ね。

あなた

あなたっていうの!











 長い長い時が流れて。インターネットと言う最新の方法を使って、妖怪の存在は世界に再認識されていった。
 あの時、彼女は自分の持つ妖力を全て世界に浸透させることで、消えていきそうな妖怪達の揚力を継ぎ足した。ようするに、時間稼ぎをしてくれたのだ。
 俺の中に託された妖力。それを使って、今から眠り姫を起こす。ずっと待ち侘びたこの日。
 妖怪は名前によって縛られる。それなのに、どうして彼女が名前を教えてくれたのか、当時の俺にはわからなかった。けれど、彼女のお父さんが教えてくれてわかったんだ。妖怪は、伴侶となるものにだけ本当の名前を教えるんだって。
 周りに誰がいようと、教えようと思った相手にしかその名前は聞こえないなんて、便利だよな。びっくりしたよ、俺にしか聞こえないなら、そう言ってくれって。
 ま、とりあえず起こそうかな。久しぶりに、君に会えると思うと、飛び上がりそうな気分だよ。
あなた

……あ、れ。
ここ、は……。

花島 涼
花島 涼
……おはよう、あなた。

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