渡辺さんが、私の幼馴染の彼氏だなんて…
思いもよらなかった
でも、会いたくなかったな…
実は私、芽衣が事故にあったとき、
一緒にいたんだよね
だから、なんで守らなかったんだよ!って
芽衣と私の両親に叱られたっけ
その後、それを知ったクラスの子達が、
私を無視し始めて…
それからかな、私が一匹狼になったのは
私の親も、芽衣の方が大事だった
私の味方になってくれた人は、
一人もいなかった
最初は、寂しかったけど、慣れてくるもので、
中学時代は、友達一人もいなくても
学校通ってたし、放課後も結構充実してた
もちろん、芽衣が亡くなったことを
忘れたわけじゃない
ずーっと、心の奥底にあるんだよ
でも、思い出してしまったら、
今の自分が壊れそうだから、
言わないでしまっておいていた
誰もいない、静かな廊下に、
私の呟きが、ただただ、
響いていた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!