「センパイセンパイ!次あれやりましょうよ!」
「はいはい、やろやろ」
私の手を引いて楽しそうな彼に、適当な返事をする。
彼は一個下の後輩で彼氏の凪くん。ついこの間、部活後に話があると言われて残ったら告白された。
私も気になっていたので、OKしたのだが――……。
「オレ金魚すくいとか久しぶりですー」
「そうなんだ」
……本当に彼の告白を受けてよかったのか、実は少し悩んでいる。
そもそも私のタイプは年上だった。彼のことは人としては好きだが、恋愛感情においてはあまり自信がない。
多分、原因は彼の方にある。
「おっ、おおお!やった!センパイ!見てください取れましたよ!」
「わ、すごいね!全然ポイ破れてないじゃん!」
「ふふふー、すごいでしょう。オレ金魚すくい名人にも勝ったことあるんですよ!」
少し得意げに、嬉しそうに話す凪くん。
私に弟はいないけど、本当に、弟にしか見えないのだ。
可愛いが、彼氏と思えていないような気がする。
そんなのを考えてるってことは、もちろん本人には内緒だけど。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。