第15話

pattern 5-王子
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2018/07/26 12:13
「俺の女に触らないでくれる?」

とてつもなく低い声が地を這った。

その威圧感に、私までも背筋が凍りつく。

「失せろ」

その一言で、怯えた表情を浮かべるナンパたちは一斉に逃げていった。

恐る恐る後ろを振り返ると、そこには心配そうに眉尻を下げる陽平くんがいた。

「大丈夫だった?怖かったよね、ごめんね一人にして」

――いつもの陽平くんだ。

私はホッとして、首を横に振り笑顔を見せた。

「ううん。陽平くんが来てくれたから」

「そっか」

陽平くんがにこっと笑った。

ニコッと笑い返し、空気が和んだと思ったのもつかの間。

「ところで」

ぐいっと強い力で腕を引かれる。

「あいつらに何かされた?」

相変わらず優しい微笑みだが、笑顔の奥に恐ろしい何かが潜んでいるような印象を受けた。

反射的に後ずさりしかけ、寸前でどうにかとどまる。

「な……何かって?」

「どこか触られたとか、好きだって言われたとか」

「え、えっと……可愛いね、とは言われたかな。その浴衣似合ってるよとか」

「……ふぅん」

陽平くんはまたあの低い声を出した。

いきなり顎をすくい上げられ、驚くうちに囁かれる。

「あいつらに褒められて嬉しかった?」

「……!?いやいや!!そんなこと思う余裕なかったし……」

「怖かったから?」

「いや…………陽平くんのことで頭がいっぱいだった、から」

恥ずかしくて本当は言えなかったが、陽平くんが無言は許さないという目で見つめてくるので逃げられなかった。

陽平くんの目が大きく見開かれる。

「……そんな可愛いこと言われたら、どうしていいかわからないんだけど」

「えっ、ご、ごめん……?」

「…………」

ちらりと陽平くんが横目で見てくる。

よくわからないがとりあえず見つめ返してみると、陽平くんはふっと笑った。

「……やっぱり、わかった。簡単だった」

「わかったの?」

「何?」そう尋ねかけた唇は、陽平くんによって塞がれていた。

「こういうことしていいんだよね。恋人なんだし」

目の前で口の端が妖しく釣り上がる。

……え?陽平、くん……?

「あ、俺結構独占欲強いから。よろしくね?“俺の”可愛い彼女さん」

裏のある微笑みに、知らず冷や汗が頬を伝う。


どうしよう……これから生きていけるかな、私。

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