いきなり牛肉盛り盛りのお弁当3個買って、
「ほらっ、帰るよっ?」
って、オマエ、何なんだよ?
寿司は?
実家は?
こっちは、一緒にメシ食って、可愛いカッコイイ、大好きなオマエの顔見ながら、もうふた晩、独りになんの、覚悟しようって思ったのにさ。
「何、してんの?
早く来てよ?」
って。
オマエも金髪を隠すように帽子かぶって、喉のためにマスクもしてるから、顔のほとんどが隠れちゃってる。
それでも、優しい目元で、笑ってるのがハッキリわかるから、オレも笑顔になっちまう。
うちに着いて、玄関の扉を閉めた途端、ぎゅーって抱きしめられる。
オレも抱きしめ返す。
オマエの喉元に顔を付けて、オマエの柔らかな甘い匂いを嗅ぐ。
そして。
オレの肺の中がオマエの匂いでいっぱいになった頃。
オマエの固い欲望が、オレのおなかに当たってるのに気付いて、体の奥がズクンとうずく。
うずきは熱になって体の真ん中に集まってくる。
オマエの手がオレのアゴをつかむから、キスするのかって思ったのに、オマエはオレを優しく見つめるだけ。
いつまで待っても降りて来ない唇に焦れて、オレは自分からオマエにキスをする。
2、3度唇を合わせたら、アッという間にキスが深くなる。
好きだ、って気持ちがふくれ上がって、もっともっともっと……!
なのにオマエは冷静で。
うっとりと夢中になってたのに、あっさり唇を離すと、腕をほどいて、靴を脱ぎ、
「ほら、手ー、洗って?」
だって。
あんな固くしてテント張ってんのに、良くガマンしてられるよ。
オレ、そっちのが感心すっわ。
もー、押し倒すか?
「おなか空いてんでしょ?
どれ、食べる?」
「オマエ」
「だーめ。
少しでも食べないとあげないよ?
だって俺はデザートだもん(笑)」
「(笑)なんだそれ。
そんな甘くねーわ。
むしろ苦ぇわ」
「ちょっ、とー。
リアルやめてよー」
オマエが赤くなるから、オレは笑う。
しょーがねーな、弁当食ってやるよ。
食べながら、話題は自然と昨日のショーのことになる。
「あんな真面目くさった顔で、カッコ付けて歩ってんの、あんま見たことなかったけどぉ。
ふたりともすっげ良かったよ。
どうせならトップで、もう少しなんかさ。
アピールできたんじゃね?」
「(びっくり)見たの?」
「見たよ。
見たに決まってんだろ、何驚いてんだよ」
「見てないのかと」
「なんでだよ」
「だっ、て。
そのことに全然触れなかったから」
オレは口の中の食べ物をごっくんと飲み込み、手元のペットボトルに手を伸ばした。
どうしよう。
言ってやるべき?
オマエを見ると微笑んでオレを見つめてた。
「俺、頑張ったからさー。
あなたに見て欲しかったからさ、見てないのか、って思ってがっかりしてたんだよ?」
「!」
コイツ、なんでこんなこと、サラッと言えんだろ?
恥ずかしくないのかな?
「がっかりし過ぎてさ、もう実家帰ろうって」
大きな手が伸びてきて、オレの頭や顔を撫でた。
優しい触りかたにウットリする。
つられてつい、
「嫉妬したんだ。
言えっかよ、んなこと」
マズイ。
言ったそばから、顔が熱くなった。
恥ずかしくてオマエの顔が見れねーのに、オマエの指がオレの唇に触り出す。
指は唇を撫でるだけでなく、口の中にまで入ってきた。
噛み付いてやろうと思ったのに。
気が付くとオレは、唇も舌も、息さえ、激しくオマエに吸われてた。
頭がぼうっとなる。
「ベッド行こ」
切迫した低い声にくらくらする。
それはもうお願いじゃなくて命令だ。
たまにしか見ない、リミッター外れたオマエ。
ああ、嬉しいなぁ。
わくわくする。
だけど。
オレから服を剥ぎ取る間もゆっくりで、荒々しいとこはひとつもない。
体に落とされるキスも丁寧で優しくて。
あれ?
リミッター外れてない?
「脚、開かなくていいから膝そろえて?」
オレの股間にローションを垂らして、両足をまとめて左肩に乗せると、後ろから脚の間に分身を擦り付け始めた。
何なんだよ、スマタかよ!
期待がおっきかった分、ガッカリし過ぎてハラが立ってきた。
オマエの分身が、ヌルヌルとオレのを擦るし、ぬめる手で刺激してくるから、ダイレクトな快感が走る。
でも今オレが欲しいのは、弾ける感覚じゃないんだもん。
このままじゃ、オマエが出しちまう。
そしたら終わっちゃう。
「待てよ、挿れてよ」
「だ、めだ、よ」
息荒くして、そんな色っぽい顔して拒否んな!
「欲しいんだ、ってば」
「昨日おなか、壊してた、でしょ?
しばらく休ま、せな、んっ」
コイツ、全然リミッター外れてねー。
行為の最中でさえ、オレの体の心配かよ!
こうなりゃ目一杯煽ってやる!
「キラキラぁ、他の男に笑顔向けないでよ。
オレ、嫉妬で焦げそうだったんだぞ?
オマエは、オレだけのもんでいてよ」
「あなただけ、のもの、だよ?」
「ちゃんとわからせて?
オマエでいっぱいにしてッ!
じゃないと寂しくて泣いちゃう」
オレは、しがみつくように抱きついた。
背中をひっかいちゃった気がするけど、もう知らん。
「好きだ、キラキラ。
大好きなんだ。
オマエにメチャクチャにされたいよ」
こっちはもう、恥ずかしさなんか感じる余裕なし!
ここに来てようやく、脚が解放され、胸に噛み付くようなキスが落ちてきた。
同時にオマエの長い指がオレの後ろを探り出す。
これこれ。
これですよ。
オレは嬉しくてゾクゾクが止まらない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。