なんとなーく、丸くおさまった、みたい。
なんだけど。
なんかしっくり来ない。
だいたい「俺の声も好き?」って質問が気に入らねー。
オレが、ちゃんとわからせてやってないってコトじゃんか。
なんだよ、「も」って。
オレはさ、世界中が好きだかんな?
好きなもんなんて山ほどあんのよ。
嫌いなもんより好きなもんが多いの!
声だってそうだよ。
みんなの声、大好きだし。
そんで素直に、アナタの声が好きですって言ってるわけで。
そんなかでもオマエのことは!
声だけじゃねーから。
全部好きだから。
今の声じゃなくっても、シブイだみ声だったとしても。
好きだから。
だから、あえて一部だけ取り出して好きって言えねーんだよな。
いや、今のハッピーな明るい高い声、好きだよ?
めちゃくちゃ大好き。
その声で名前呼ばれて顔撫でられると、ドキドキわくわくしちゃうぐらいだぜ?
でもさ、だからってそれしか好きなわけじゃないじゃん。
病気になって会えないと、オマエは今何してんだろって、めちゃくちゃ思うし。
ただ会いたいし。
グループのこと、なんか言われてれば、オマエが何て言われてるか気になるし。
一緒の仕事は楽しくて、なんかでオマエがいないとつまんないし。
たまに遅刻なんかしてくっと、ナニやってんだよ!って、ほんとムカつくよ?
声も体も性格も。
頭いいとこも。
めちゃくちゃキツいこと言いながら、実は優しいとこも。
オレはオマエの全部が好きで、興味があんだよ。
オマエならなんて言うかな、どう感じるかな、ってさ。
それがなんだよ?
「オレの声も(あの人の声と同じように)好き?」って。
オレは、オマエ「が」好きなんだよ。
オマエのことは、オマエ「も」好きとは違うんだよ。
誰かと一緒じゃねーんだよ。
おんなじレベルじゃねーのよ。
一体どう言ったらわからせられる?
オレ、オマエみたいにうまく言えない。
なんて言ったらいいかわかんない。
だからつい、体に訴えちゃったけど。
モヤモヤしたまま仕事に行ったら、背高が来てた。
今日は2人で行動だったな。
「テレビ見ましたよー。
相変わらず人の人生救ってるっすねー」
「ナニ言ってんだよ、たまたまだって」
「リーダーがいなかったら、今の自分はいない、って言ってんの、ボクが知ってる限り、公式でもう3人ですよ?
他グループ人気No. 1のあの人、ボク、そんでこの前のテレビのあの人」
「それは全部オマエらが既に持ってて、前向きに努力した結果だろ?
オレはたまたま」
「あなたがいなかったら、ボク含め、みんなこうなってないですやん(笑)
恩師?ではないから、やっぱ恩人やな。
いつか、おっきく恩返ししたい大切な人」
「////
自分のファン、今の3倍にして、グループに貢献してくれればいいよ」
「えげつな!(笑)」
恩人か。
そんな風に言ってもらうのはやっぱ嬉しいな。
でも、そういえばキラキラに、その手のこと、言われたことない。
アイツ、自分がオレを見つけたんだって思ってるかもしんないな。
『心配しなくても、俺たちなら絶対売れますって!
俺、ドームで2万個のサイリウムが点灯して、俺たちに向けて振られて揺れてるの想像できるもん。
他のグループで見てきてるけど、すごい景色なんだよねー。
それが俺らに向かって揺れるんだよ?
あなた、それ見たら絶対泣くと思うなぁ』
何度も何度も語られるオマエの言葉。
オマエがそう言うから、なんだかホントにそうなる気がして、オレ……。
「そういえばおなか……」
「おなか?」
「キラキラがずっと心配してた……冷やしたみたいなんだよーって」
「いつの話だよ、もうとっくに治ったわ(笑)」
「(笑)」
「アイツ、そんなことまでしゃべってんの?」
「あ、いや、なんか元気なくて。
って言うか、心半分どっかに行ってるって言うか、集中し切れてない感じやって。
どしたん?て聞いたら、大丈夫なのはわかってるけど、あなたのそばにいたくて、ってゆうから。
そんな甘やかしたらダメやん、て言ったんすよ?
そしたら、あなたに甘えてんのは自分の方なんだ、って言ってました」
!
なんなんだよ、オマエ。
どーゆー自覚だよ?
オレを甘やかすコトで甘えてるってコト?
……そーゆーとこなんだよな、オマエが愛しいのはさ。
「ボクがこんなこと言ったのはオフレコで頼んます。
なんでそーゆーこと言うのー!って怒られそうやわ(笑)」
「わーってるよ!
ちなみにオレ、メンバーみんなに甘えてっから!
背高もみんなに甘えていいんだかんな!」
「このグループの、ありのまま、自分のまんまでいいんだよって雰囲気、最高ですやん。
でもそれは、頑張りあってのことやから」
「それわかってりゃ、たとえ失敗しても誰も責めんよ。
オレなんか失敗ばっかじゃん」
「(笑)リーダーが誰より熱く頑張ってんのは、みんな知ってますやん。
ちょっとは失敗してくれないと、完璧過ぎて近寄れませんて」
「(笑)
さー、今日も頑張んぞ!」
キラキラ。
オレ、今日も頑張るから。
あとで、優しくキスして、ぎゅーしてくれよな。
頭を撫でて笑いかけて。
大好きなその声で名前を呼んで。
オレはみんなが大好きだよ。
だけど。
オレに必要なのはオマエなんだ。
空気や水みたいに、無いと生きていけないんだ。
オレは今、オマエの目の中を、覗きたくてたまらない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!