第8話

好きと必要 ②
111
2023/01/06 00:35





なんとなーく、丸くおさまった、みたい。

なんだけど。

なんかしっくり来ない。



だいたい「俺の声も好き?」って質問が気に入らねー。

オレが、ちゃんとわからせてやってないってコトじゃんか。
なんだよ、「も」って。



オレはさ、世界中が好きだかんな?
好きなもんなんて山ほどあんのよ。
嫌いなもんより好きなもんが多いの!

声だってそうだよ。
みんなの声、大好きだし。
そんで素直に、アナタの声が好きですって言ってるわけで。



そんなかでもオマエのことは!

声だけじゃねーから。
全部好きだから。
今の声じゃなくっても、シブイだみ声だったとしても。

好きだから。


だから、あえて一部だけ取り出して好きって言えねーんだよな。


いや、今のハッピーな明るい高い声、好きだよ?
めちゃくちゃ大好き。
その声で名前呼ばれて顔撫でられると、ドキドキわくわくしちゃうぐらいだぜ?
でもさ、だからってそれしか好きなわけじゃないじゃん。




病気になって会えないと、オマエは今何してんだろって、めちゃくちゃ思うし。
ただ会いたいし。

グループのこと、なんか言われてれば、オマエが何て言われてるか気になるし。

一緒の仕事は楽しくて、なんかでオマエがいないとつまんないし。
たまに遅刻なんかしてくっと、ナニやってんだよ!って、ほんとムカつくよ?




声も体も性格も。
頭いいとこも。
めちゃくちゃキツいこと言いながら、実は優しいとこも。

オレはオマエの全部が好きで、興味があんだよ。
オマエならなんて言うかな、どう感じるかな、ってさ。


それがなんだよ?
「オレの声も(あの人の声と同じように)好き?」って。


オレは、オマエ「が」好きなんだよ。
オマエのことは、オマエ「も」好きとは違うんだよ。
誰かと一緒じゃねーんだよ。
おんなじレベルじゃねーのよ。


一体どう言ったらわからせられる?
オレ、オマエみたいにうまく言えない。
なんて言ったらいいかわかんない。
だからつい、体に訴えちゃったけど。








モヤモヤしたまま仕事に行ったら、背高が来てた。
今日は2人で行動だったな。


「テレビ見ましたよー。
相変わらず人の人生救ってるっすねー」


「ナニ言ってんだよ、たまたまだって」


「リーダーがいなかったら、今の自分はいない、って言ってんの、ボクが知ってる限り、公式でもう3人ですよ?
他グループ人気No. 1のあの人、ボク、そんでこの前のテレビのあの人」


「それは全部オマエらが既に持ってて、前向きに努力した結果だろ?
オレはたまたま」


「あなたがいなかったら、ボク含め、みんなこうなってないですやん(笑)
恩師?ではないから、やっぱ恩人やな。
いつか、おっきく恩返ししたい大切な人」


「////
自分のファン、今の3倍にして、グループに貢献してくれればいいよ」


「えげつな!(笑)」





恩人か。
そんな風に言ってもらうのはやっぱ嬉しいな。

でも、そういえばキラキラに、その手のこと、言われたことない。
アイツ、自分がオレを見つけたんだって思ってるかもしんないな。


『心配しなくても、俺たちなら絶対売れますって!
俺、ドームで2万個のサイリウムが点灯して、俺たちに向けて振られて揺れてるの想像できるもん。
他のグループで見てきてるけど、すごい景色なんだよねー。
それが俺らに向かって揺れるんだよ?
あなた、それ見たら絶対泣くと思うなぁ』


何度も何度も語られるオマエの言葉。
オマエがそう言うから、なんだかホントにそうなる気がして、オレ……。






「そういえばおなか……」


「おなか?」


「キラキラがずっと心配してた……冷やしたみたいなんだよーって」


「いつの話だよ、もうとっくに治ったわ(笑)」


「(笑)」


「アイツ、そんなことまでしゃべってんの?」


「あ、いや、なんか元気なくて。
って言うか、心半分どっかに行ってるって言うか、集中し切れてない感じやって。
どしたん?て聞いたら、大丈夫なのはわかってるけど、あなたのそばにいたくて、ってゆうから。
そんな甘やかしたらダメやん、て言ったんすよ?
そしたら、あなたに甘えてんのは自分の方なんだ、って言ってました」





なんなんだよ、オマエ。
どーゆー自覚だよ?
オレを甘やかすコトで甘えてるってコト?


……そーゆーとこなんだよな、オマエが愛しいのはさ。





「ボクがこんなこと言ったのはオフレコで頼んます。
なんでそーゆーこと言うのー!って怒られそうやわ(笑)」


「わーってるよ!
ちなみにオレ、メンバーみんなに甘えてっから!
背高もみんなに甘えていいんだかんな!」


「このグループの、ありのまま、自分のまんまでいいんだよって雰囲気、最高ですやん。
でもそれは、頑張りあってのことやから」


「それわかってりゃ、たとえ失敗しても誰も責めんよ。
オレなんか失敗ばっかじゃん」


「(笑)リーダーが誰より熱く頑張ってんのは、みんな知ってますやん。
ちょっとは失敗してくれないと、完璧過ぎて近寄れませんて」


「(笑)
さー、今日も頑張んぞ!」






キラキラ。


オレ、今日も頑張るから。

あとで、優しくキスして、ぎゅーしてくれよな。

頭を撫でて笑いかけて。

大好きなその声で名前を呼んで。



オレはみんなが大好きだよ。

だけど。

オレに必要なのはオマエなんだ。

空気や水みたいに、無いと生きていけないんだ。



オレは今、オマエの目の中を、覗きたくてたまらない。
















プリ小説オーディオドラマ