『君といつか』
*VOL21*
大:や〜その子、好きなやつおんねん。
〇:だからアピらなきゃ!大くんの優しさを知ったら、好きになっちゃうかもよぉ〜!
大:……もう…知っとると思うねんけどな…
〇:そうなの?
大:その子さ〜好きなやつと上手くいっとるみたいで、どんどんキレイになってくねん。
傍におるだけで、ほんまドキドキする…
俺の入る隙間なんて、無いねんなぁ〜って思う。
大くん…
いつも明るくて、元気で、頼もしい大くんが、
弱々しいところを見せるなんて…
ヒーローでも、違う一面が あるんだな…
〇:辛いね…私で良ければ…
私は大くんを抱きしめた。
いつも守ってくれた大くんは、私にとってはヒーローでもあり、大切なお兄ちゃん。
大くんは、強めに抱きしめ返してきた。
大くんの辛さが伝わって、私も苦しかった。
〇:いつか、伝わるといいね!大くんの気持ち!
大:ありがと。〇〇は優しいな(笑)
*VOL22*
私と結奈は、頑張って頑張って、本当に頑張って、受験を乗り越えた。
合格を知らせると、淳太くんも喜んでくれた。
淳:よく頑張ったな!4月からまた一緒に行こな(笑)
〇:うん!!!
私は、また淳太くんと同じ学校へ通える事ばかりに、気が回っていた。
でも、そこは大学附属高校。
学区内の中学とは違っていた。
入学して間も無く、その試練を突きつけられた。
女:麗華さんが、お呼びです。
と、上級生に連れ出された。
「麗華さん」って…誰?
そこは、何の部屋かは分からないが、応接間の様になっていた。
麗:〇〇さん…でしたっけ?
薄っすら微笑むその人は、
印象的なロングの黒髪…
淳太くんの彼女だった。
大学生のこの人が、どうしてココに?
〇:は、はい…
麗:貴方を、1年間見張らせて頂きます。
〇:どういう事ですか?
麗:私の婚約者に、手を出さない様にです。
〇:えっ…婚約者…
*VOL23*
教室へ戻ると、さっきまで仲良くしてくれていた子が、よそよそしくなっていた。
私の高校生活…どうなっちゃうんだろう?
楽しみだったハズの生活が、一転した。
結:私は な〜んにも、気にしない!ふたりで楽しもう!
大:ぅわぁぁぁぁぁッ!!!
後ろから コッソリ近づいてきた大くんの声に、私達だけでなく、周りにいた人達まで、ビクッとした。
結:もぉッ!大毅ーーーッ!!!
〇:あははは〜〜っ!
このふたりと居ると、ホント笑顔にさせられる(笑)
変わらないで接してくれる このふたりが、救いであり、オアシスだった。
大:麗華は、理事長の孫なんや。
結:えッ!そんな人が、なんで私達の中学に転校してきたのよ?
大:淳太目当てや。
〇:淳太くん?
大:おん。淳太のオトン、結構な規模の会社の社長さんらしいで。
〇:えっ!知らなかった…
*VOL24*
淳太くんのお家は、お母さんと弟の三人だけだった。
お父さんには、会ったことが無い。
大:ただ…気になる事があんねん…
結:何よ!焦らさないで早く言ってよ!
大:あのな…麗華…恐らく、病気やねん。
結:病気って 何の?
大:そらぁ〜分からんけど。中学ん時から、結構 休んどったみたいでな。
〇:…あ!もしかして、あの黒髪…
大:カツラや。
なんか違和感があったのは、そう言う事だったんだ…
病気って…
もしかして、長く無いのかなぁ?
〇:はぁぁぁぁ〜〜っ…なんだか 重いよ。めげそう。
結:なにそれ?諦めるって事?
〇:そうじゃないけど…次元が違いすぎるよぉ…私の指切りだけの七夕のお願い事とは…
政略結婚ってやつ?
しかも、麗華さん…病気だなんて…
淳太くん、優しいからなぁ〜
病気って聞いて、断れなかったのかなぁ〜
*VOL25*
朝、いつもの様に淳太くんが迎えに来てくれた。
でも、様子が違った。
淳:ゴメン…〇〇。
〇:えっ?
淳:これからは一緒に行けへん。
〇:…どうして?
淳:いろいろと、あってな…
〇:・・・分かっ…た…
涙を堪えた。
信じてる。
ただ それだけ。
何度も心で つぶやいた、、、
ひとりで淋しそうな私をみて、結奈と大くんが一緒に登校してくれた。
結:ねぇ、〇〇?あの人、カッコよくない?
結奈は私の後ろから、イヤホンをして吊革に掴まっている男子を チラ見していた。
大:俺の方がカッコええわ。なぁ〇〇?!
〇:確かに…イケメンかもね。
結:何年生かなぁ?
大:俺と同じクラスや。
結:えっ!マジ?大毅の物、なんか貸して!
大:なに?意味わからんし!
結:忘れ物〜って言って、教室まで届けるから!ねぇ〜イイでしょぉ〜お願ぁ〜い!
大:スリスリすな!キモいわ!
*VOL26*
結奈は大くんのポケットから、サッとスマホを取り出して、悪そぉ〜な笑みを浮かべた。
結:〇〇!早く大毅のクラス行こ!
教室に着いて鞄を降ろしてる私に言った。
〇:えッ!私も?
結:いいじゃん!〇〇も一緒じゃなきゃ行けなぁい〜
もぉ〜可愛い〜(笑)
私に第六感が備わっていたのなら…
例えば、予知とかできたなら…
そんな人…存在するのかも分からないけど…
そんな風に、後悔するしか思い付かなかった、私は…馬鹿だ。
この時…一緒に行かなければ…
結奈と大くんを巻き込む事には ならなかったのかも知れない…
結:大毅!!!
結奈は大くんのクラスのドアから呼んだ。
結構な人数の人達が、こっちに振り返って、私達は一瞬 凍りついた。
大くんがコッチに向かってくると、明らかに私達に敵意を抱いた女子が、こっちを見ながらヒソヒソと話していた。
*VOL27*
男:重岡!彼女かぁ?!!!
大:お前ら そんな事しか頭にないんかい!妹や!!!
男:な〜んだ、つまらん!でも…ふたりとも可愛いなぁ〜
大:うっせ〜!あっちいけ!だからヤなんだよ!!!
結:あの人…いないの?
大:おん。おらんな。
結:えぇぇぇーーーッ!大毅のアホ!!!
大:俺のせいやないやん!
〇:残念だったね〜(笑)
結:あぁ〜〇〇なんで嬉しそう?ひどぉ〜い!
〇:だってぇ〜結奈に彼氏できたら、私ひとりぼっちだもん…
大:俺がおるやないかぁ〜
〇:そっかぁ!忘れてたぁ!
大:こんな傍におって、忘れるかぁ?
涼:シゲ〜楽しそうだなぁ〜
ハンカチで手を拭きながら、教室に戻ってきた男子が声を掛けてきた。
きた!結奈のイケメン!
結奈は少し私の後ろに重なるように、私の腕を掴んだ。
そんな結奈を見ると、顔を赤く染め、しおらしく、かなり可愛くなっていた。
*VOL28*
涼:ん?妹かな?
結:え、あの…どうして分かるんですか?
涼:だってコレ。重岡って。
そう言って結奈の名札を指した。
結:そ、そっか…い、妹です。
涼:結奈ちゃん?俺、涼介。そっちの子は?
〇:あ〜〇〇です。
涼:〇〇ちゃん。よろしくね!シゲにこんな可愛い妹がいたなんて、知らなかった〜
大:言ってへんからな。
ん?大くん、どした?
機嫌悪くない?
私達は、教室へ戻るまで、笑いが止まらなかった。
結奈が、亮介さんの細かいトコたくさん見てたらしくて、「鼻がヤバかった」とか「ホクロがヤバかった」とか「まつ毛がヤバかった」とか…
〇:分かった分かった!もぉ、そんなにたくさん〜「全部ヤバかった」でイイんじゃないのぉ〜?!(笑)
結:分かってないなぁ〜全部やないねん!
〇:あ!久々 聞いたぁ〜!結奈の関西弁!
結:やべ!エセが!
〇:エセじゃないのに〜(笑)
*VOL29*
結奈はまだ赤ちゃんの頃に引っ越してきたから、関西で育っていなかった。
帰り。
下駄箱まで来ると、大くんが傘立てに座って、スマホを触っていた。
〇:大くん!何やってんの?
結:絶対ゲームだ。
大:お前らが遅いからや!
結:先帰りなよ〜過保護か!シスコンか!
大:自意識過剰やな!お前だけなら待っとるわけ無いやろ!
結:はいはい。どうせまた「〇〇と違って可愛ないなぁ〜」とか ぬかすんでしょ!
大:〇〇?結奈 抜きで帰ろ?!
〇:うん!いいよ!
結:えーーーッ!〇〇まで そっちなん?
大:出たエセ!
結:うっさい!〇〇帰ろっ!
〇:うん!(笑)
この ふたりと居るとホント楽しい!
〇:ねぇ〜ねぇ〜おふたりさん!
大・結:なにぃ?
〇:私、言ったっけ?ふたりの事ぉ…メッチャすっきゃねんッ!!!
大・結:・・・エセやわぁ〜〜!(笑)
笑いが絶えない。
こんな関係が、ずっと続けばと思った。
*VOL30*
駅に着くと、ホームに電車が来て、私達は急いで乗り込んだ。
大:お前らが遅いから、急がなアカンかったやろぉ?!
結:いつまで そんな事 言ってんの?あ〜シツコイ男!
大:し〜つ〜こ〜い〜だぁとぉ〜〜ッ?!
大くんは、結奈の両ホッペを摘んだ。
大:プファ〜〜ッ!変な顔〜!!!
結:もぉ!やめて!こんなお兄 いらん!!!
私達と同時に、隣のドアから駆け込んだ同じ制服の男子が話しかけてきた。
涼:いつも楽しそうだね〜
結:あ、涼介さん!
一気に声質が変わり、女子が出てきた結奈。
さっきまでの、大くんと じゃれ合ってた結奈とは大違い!
その日から、こうやって電車に揺られ、涼介さんと話しながら帰る日が増えていった。
結奈は…
相変わらず片思い期間で、とっても楽しそうだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。