第2話

『 君といつか 』21 〜
211
2019/05/19 05:09
『君といつか』

*VOL21*
大:や〜その子、好きなやつおんねん。
〇:だからアピらなきゃ!大くんの優しさを知ったら、好きになっちゃうかもよぉ〜!
大:……もう…知っとると思うねんけどな…
〇:そうなの?
大:その子さ〜好きなやつと上手くいっとるみたいで、どんどんキレイになってくねん。
傍におるだけで、ほんまドキドキする…
俺の入る隙間なんて、無いねんなぁ〜って思う。

大くん…
いつも明るくて、元気で、頼もしい大くんが、
弱々しいところを見せるなんて…

ヒーローでも、違う一面が あるんだな…

〇:辛いね…私で良ければ…

私は大くんを抱きしめた。

いつも守ってくれた大くんは、私にとってはヒーローでもあり、大切なお兄ちゃん。

大くんは、強めに抱きしめ返してきた。
大くんの辛さが伝わって、私も苦しかった。

〇:いつか、伝わるといいね!大くんの気持ち!
大:ありがと。〇〇は優しいな(笑)


*VOL22*
私と結奈は、頑張って頑張って、本当に頑張って、受験を乗り越えた。

合格を知らせると、淳太くんも喜んでくれた。

淳:よく頑張ったな!4月からまた一緒に行こな(笑)
〇:うん!!!

私は、また淳太くんと同じ学校へ通える事ばかりに、気が回っていた。

でも、そこは大学附属高校。
学区内の中学とは違っていた。

入学して間も無く、その試練を突きつけられた。


女:麗華さんが、お呼びです。

と、上級生に連れ出された。
「麗華さん」って…誰?

そこは、何の部屋かは分からないが、応接間の様になっていた。

麗:〇〇さん…でしたっけ?

薄っすら微笑むその人は、
印象的なロングの黒髪…

淳太くんの彼女だった。

大学生のこの人が、どうしてココに?

〇:は、はい…
麗:貴方を、1年間見張らせて頂きます。
〇:どういう事ですか?
麗:私の婚約者に、手を出さない様にです。
〇:えっ…婚約者…


*VOL23*
教室へ戻ると、さっきまで仲良くしてくれていた子が、よそよそしくなっていた。

私の高校生活…どうなっちゃうんだろう?

楽しみだったハズの生活が、一転した。


結:私は な〜んにも、気にしない!ふたりで楽しもう!
大:ぅわぁぁぁぁぁッ!!!

後ろから コッソリ近づいてきた大くんの声に、私達だけでなく、周りにいた人達まで、ビクッとした。

結:もぉッ!大毅ーーーッ!!!
〇:あははは〜〜っ!

このふたりと居ると、ホント笑顔にさせられる(笑)

変わらないで接してくれる このふたりが、救いであり、オアシスだった。


大:麗華は、理事長の孫なんや。
結:えッ!そんな人が、なんで私達の中学に転校してきたのよ?
大:淳太目当てや。
〇:淳太くん?
大:おん。淳太のオトン、結構な規模の会社の社長さんらしいで。
〇:えっ!知らなかった…


*VOL24*
淳太くんのお家は、お母さんと弟の三人だけだった。

お父さんには、会ったことが無い。

大:ただ…気になる事があんねん…
結:何よ!焦らさないで早く言ってよ!
大:あのな…麗華…恐らく、病気やねん。
結:病気って 何の?
大:そらぁ〜分からんけど。中学ん時から、結構 休んどったみたいでな。
〇:…あ!もしかして、あの黒髪…
大:カツラや。

なんか違和感があったのは、そう言う事だったんだ…

病気って…
もしかして、長く無いのかなぁ?

〇:はぁぁぁぁ〜〜っ…なんだか 重いよ。めげそう。
結:なにそれ?諦めるって事?
〇:そうじゃないけど…次元が違いすぎるよぉ…私の指切りだけの七夕のお願い事とは…

政略結婚ってやつ?
しかも、麗華さん…病気だなんて…

淳太くん、優しいからなぁ〜
病気って聞いて、断れなかったのかなぁ〜


*VOL25*
朝、いつもの様に淳太くんが迎えに来てくれた。

でも、様子が違った。

淳:ゴメン…〇〇。
〇:えっ?
淳:これからは一緒に行けへん。
〇:…どうして?
淳:いろいろと、あってな…
〇:・・・分かっ…た…

涙を堪えた。

信じてる。
ただ それだけ。

何度も心で つぶやいた、、、


ひとりで淋しそうな私をみて、結奈と大くんが一緒に登校してくれた。

結:ねぇ、〇〇?あの人、カッコよくない?

結奈は私の後ろから、イヤホンをして吊革に掴まっている男子を チラ見していた。

大:俺の方がカッコええわ。なぁ〇〇?!
〇:確かに…イケメンかもね。
結:何年生かなぁ?
大:俺と同じクラスや。
結:えっ!マジ?大毅の物、なんか貸して!
大:なに?意味わからんし!
結:忘れ物〜って言って、教室まで届けるから!ねぇ〜イイでしょぉ〜お願ぁ〜い!
大:スリスリすな!キモいわ!


*VOL26*
結奈は大くんのポケットから、サッとスマホを取り出して、悪そぉ〜な笑みを浮かべた。

結:〇〇!早く大毅のクラス行こ!

教室に着いて鞄を降ろしてる私に言った。

〇:えッ!私も?
結:いいじゃん!〇〇も一緒じゃなきゃ行けなぁい〜

もぉ〜可愛い〜(笑)


私に第六感が備わっていたのなら…
例えば、予知とかできたなら…
そんな人…存在するのかも分からないけど…

そんな風に、後悔するしか思い付かなかった、私は…馬鹿だ。

この時…一緒に行かなければ…
結奈と大くんを巻き込む事には ならなかったのかも知れない…



結:大毅!!!

結奈は大くんのクラスのドアから呼んだ。

結構な人数の人達が、こっちに振り返って、私達は一瞬 凍りついた。

大くんがコッチに向かってくると、明らかに私達に敵意を抱いた女子が、こっちを見ながらヒソヒソと話していた。


*VOL27*
男:重岡!彼女かぁ?!!!
大:お前ら そんな事しか頭にないんかい!妹や!!!
男:な〜んだ、つまらん!でも…ふたりとも可愛いなぁ〜
大:うっせ〜!あっちいけ!だからヤなんだよ!!!
結:あの人…いないの?
大:おん。おらんな。
結:えぇぇぇーーーッ!大毅のアホ!!!
大:俺のせいやないやん!
〇:残念だったね〜(笑)
結:あぁ〜〇〇なんで嬉しそう?ひどぉ〜い!
〇:だってぇ〜結奈に彼氏できたら、私ひとりぼっちだもん…
大:俺がおるやないかぁ〜
〇:そっかぁ!忘れてたぁ!
大:こんな傍におって、忘れるかぁ?
涼:シゲ〜楽しそうだなぁ〜

ハンカチで手を拭きながら、教室に戻ってきた男子が声を掛けてきた。

きた!結奈のイケメン!

結奈は少し私の後ろに重なるように、私の腕を掴んだ。

そんな結奈を見ると、顔を赤く染め、しおらしく、かなり可愛くなっていた。


*VOL28*
涼:ん?妹かな?
結:え、あの…どうして分かるんですか?
涼:だってコレ。重岡って。

そう言って結奈の名札を指した。

結:そ、そっか…い、妹です。
涼:結奈ちゃん?俺、涼介。そっちの子は?
〇:あ〜〇〇です。
涼:〇〇ちゃん。よろしくね!シゲにこんな可愛い妹がいたなんて、知らなかった〜
大:言ってへんからな。

ん?大くん、どした?
機嫌悪くない?


私達は、教室へ戻るまで、笑いが止まらなかった。

結奈が、亮介さんの細かいトコたくさん見てたらしくて、「鼻がヤバかった」とか「ホクロがヤバかった」とか「まつ毛がヤバかった」とか…

〇:分かった分かった!もぉ、そんなにたくさん〜「全部ヤバかった」でイイんじゃないのぉ〜?!(笑)
結:分かってないなぁ〜全部やないねん!
〇:あ!久々 聞いたぁ〜!結奈の関西弁!
結:やべ!エセが!
〇:エセじゃないのに〜(笑)


*VOL29*
結奈はまだ赤ちゃんの頃に引っ越してきたから、関西で育っていなかった。


帰り。
下駄箱まで来ると、大くんが傘立てに座って、スマホを触っていた。

〇:大くん!何やってんの?
結:絶対ゲームだ。
大:お前らが遅いからや!
結:先帰りなよ〜過保護か!シスコンか!
大:自意識過剰やな!お前だけなら待っとるわけ無いやろ!
結:はいはい。どうせまた「〇〇と違って可愛ないなぁ〜」とか ぬかすんでしょ!
大:〇〇?結奈 抜きで帰ろ?!
〇:うん!いいよ!
結:えーーーッ!〇〇まで そっちなん?
大:出たエセ!
結:うっさい!〇〇帰ろっ!
〇:うん!(笑)

この ふたりと居るとホント楽しい!

〇:ねぇ〜ねぇ〜おふたりさん!
大・結:なにぃ?
〇:私、言ったっけ?ふたりの事ぉ…メッチャすっきゃねんッ!!!
大・結:・・・エセやわぁ〜〜!(笑)

笑いが絶えない。
こんな関係が、ずっと続けばと思った。


*VOL30*
駅に着くと、ホームに電車が来て、私達は急いで乗り込んだ。

大:お前らが遅いから、急がなアカンかったやろぉ?!
結:いつまで そんな事 言ってんの?あ〜シツコイ男!
大:し〜つ〜こ〜い〜だぁとぉ〜〜ッ?!

大くんは、結奈の両ホッペを摘んだ。

大:プファ〜〜ッ!変な顔〜!!!
結:もぉ!やめて!こんなお兄 いらん!!!

私達と同時に、隣のドアから駆け込んだ同じ制服の男子が話しかけてきた。

涼:いつも楽しそうだね〜
結:あ、涼介さん!

一気に声質が変わり、女子が出てきた結奈。

さっきまでの、大くんと じゃれ合ってた結奈とは大違い!

その日から、こうやって電車に揺られ、涼介さんと話しながら帰る日が増えていった。

結奈は…
相変わらず片思い期間で、とっても楽しそうだった。

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