第4話

『 君といつか 』41 〜
162
2019/05/19 20:37
『君といつか』

*VOL41*
涼:おはよ〜
結:おはようございます!!!

えっ?さっきのダルさは?(笑)
ホント可愛いなぁ〜

大:あぁ〜涼介くぅん!レポートは〜やったんかな?

大くん…宿題 忘れたのか…
兄妹して、涼介さんを欲してるんじゃん!(笑)

ニヤけながらスリ寄る大くんに、涼介さんも乗って言った。

涼:やったよぉ〜どぉしたのかなぁ?大毅くぅん?
大:分かってるクセにぃ〜イケズやなぁ〜
涼:高く付くでぇ〜
大:ゔっ…それは痛い…
涼:とりあえず、貸しな!
大:やったっ!!!

笑顔でガッツポーズをする大くんは、無邪気で可愛かった。

クラスの下駄箱で履き替え、何気なく ふと見ると…
そこには、淳太くんが居て、下駄箱から教室へ向かうところだった。

ねぇ!振り向いて!淳太くん!

結:〇〇!早くぅ〜

結奈がワザと私を呼んだ。
その声に気付いた淳太くんが振り向いてくれた。

自然と笑顔になる。
ほんの数秒…


*VOL42*
そっと小さく手を振る私に、
淳太くんは照れ臭そうに、チョットだけ手を振り、行ってしまった。

〇:淳太くん…

呟きが聞こえたのか、もう一度だけ振り向いて、2、3歩後ろ向きで笑顔を見せてくれた。

その姿を、見えなくなるまで見続けた。

結:会えて良かったね。
〇:うんっ!!!




私達の絆は繋がっていた。




淳太くんのお手紙の心配も、大丈夫そうだったし。


その日は、幸せな1日が過ごせるんじゃないかと思っていたのに…
昼休みになると一転した。

結奈と私がお弁当を食べていると、クラスの男子数人がイタズラに言ってきた。

男1:〇〇って、結構やるんだな〜
結:アンタ達 何よ!
男2:掲示板に公開されてたよ!
結:えっ?何が?
男1:写真が貼り出されてた。誰かのイタズラだな。
〇:……イタズラ…?

私達は、急いで掲示板へ向かった。

何が起こっているのか…
怖かった…


*VOL43*
結:やっぱり…
〇:えっ?
結:とにかく剥がそう!
大:俺も手伝う!
結:あ、大毅!お願い!

私達は、100枚ほどある写真と、それを捕捉している貼り紙 数枚を剥がした。

その全てに、私が映っていて、大くんと手を繋いでいたり、観覧車に乗っているものや、涼介さんと手を繋いでたり、ハグしているものなど…

とにかく、あの日の遊園地での出来事だった。

貼り紙には『アバズレ要注意!』と書かれていた。

〇:あ、あの…結奈?ゴメン…ね…?
結:好きなの?

結奈は穏やかに聞いた。
その穏やかさに、少し違和感を感じた。

〇:私は、淳太くんだけだよ。これは、絶対に一生変わらない!

信じてるんだ。
何があっても。

私は強い眼差しで答えた。

結:だよね。でも、こうなっちゃったからには、今までみたいにはいかない。
〇:えっ…


*VOL44*
〇:結奈…親友じゃ、なくなるって事?
結:今日は一人にさせて。

真剣な顔で そう言うと、結奈は私から離れて行った。

大:焼却炉 行こか。
〇:うん。

私は大くんに促され、焼却炉までの道を、トボトボと歩いた。

大:寒ないか?

こんな時まで、優しいんだ…

〇:ゴメンね…大くんに まで迷惑掛けて…
大:〇〇が謝る事ないやろ?!誰がやったんか知らんが、悪いのはそいつやん!
〇:でも…分かるでしょ?あの人だよ…きっと…
大:麗華か?
〇:…それしか考えられないし…大成功だよね。私の評判は最悪になっただろうし、その上、結奈にまで嫌われちゃって…ぼっちになった。…今頃…高笑いしてるんだ…

っ!!!だ、大くん?!!!
衝撃で持っていた写真が、バザッと地面に落ちた。

大:また忘れとる。こんな近くにおるやん。ひとりやないやんか。

大くんは、私を抱きしめながら言った。


*VOL45*
大:頼りや?〇〇の為なら、どんな嫌がらせでも平気や!
〇:大くん…ありがとう…
大:おん!
〇:やっぱ 優しいんだね!大くんは!(笑)
大:お、おん// …あ〜拾わなな//

私達は無数の写真を拾い、焼却炉へ投げ込んだ。

授業中の教室へ戻ると、クラスメイトは私を冷やかな目で見ていた。

誰も私を可愛そうだとは思っていなかったし、結奈に至っては、私に目もくれなかった。

今日から『アバズレ』扱いか…
さっきの写真…淳太くんも目にしたかな?
結奈には何て言えば誤解が解けるかな?

授業なんて、頭に入らない。
もう 泣きそうだよ…


放課後。
帰る準備をしようと、結奈を確認したが、既にいなかった。

下駄箱まで行くと、大くんが待っていてくれた。

〇:大くん…結奈は?
大:先 帰った。
〇:そっか…

帰り道が、こんなに静かなのは初めてだ…


*VOL46*
いつも結奈がいるから、私達は明るく過ごしてこられた事に気付かされた。

結奈…
結奈が辛い時に、傍にいられないのが…
辛いよ…

大:ウチ来るか?
〇:えっ?
大:結奈と話したいやろ?!
〇:…うん…でも…結奈が嫌がるんじゃ…
大:大丈夫や!

大くんの大丈夫は、大丈夫じゃない時もあるからなぁ〜
もし、結奈に追い返されたら…
私…立ち直れないかも知れないし…

〇:今日は…辞めとく…
大:そっか?ほな、また明日な。
〇:うん。明日ね……あ!大くん!
大:ん?
〇:ありがとう…ホントに…ありがとう。
大:おん!(笑)


家に着くと、お母さんが出迎えてくれた。

母:さっきね、淳太くんに会ったの。なんだか…〇〇の事、心配してたわよ。
〇:え、淳太くんが?!
母:うん。「家に居るから」って伝えてくださいって。行ってきたら?
〇:…うん。


*VOL47*
きっと、淳太くんも あの写真を見たんだよな…
そう思うと、チョット不安だった。

でも、会いたい気持ちの方が、何倍も強かった。

ピンポーン♪ ガチャッ!

淳母:いらっしゃい!淳太、ソワソワしながら待ってるわよぉ〜

淳太くん…
ホントに待っててくれたんだ…

それだけで嬉しくて、淳太くんの部屋をノックする音が、跳ねて聞こえた。

コンッコンッ!「〇〇です」
「は!はい!」と、慌てた声が聞こえ、ドアが開いた。

淳:良かったぁ〜
〇:え?良かった?
淳:おいで!

ポカン?とする私の腕を引っ張り、ドアを閉めると同時に、淳太くんは私を抱きしめた。

淳:会いたかった…

ドキドキして、ふぅぅぅ〜〜っと、
大きな息を吐いて、ゆっくりと淳太くんの背中に手を回した。

〇:私も………あったかい。

淳太くんの腕の中…
やっぱり、特別な人なんだと思った。


*VOL48*
淳:〇〇が泣いてると思うて…ゴメンな…
〇:大丈夫。淳太くん いるから。
淳:そやな。ありがとう。
〇:さっきの「良かった」って…なんで?
淳:…嫌われたかと思って…
〇:えッ、ア、アレは何でも無いんだよ!ただ、手を引っ張られてたり、ハグされてたり しただけで、私、誰も好きになんてなってないからっ!淳太くんだけだから…

チョット必至になってしまった。
だって全部、嘘なんだもん!

淳:そんな風に思ってないから大丈夫や(笑)
〇:え?そうなの?
淳:アレさ、誰の仕業かは分からないけど、〇〇はやっぱり、麗華さんだと思ってるやろ?
〇:う、うん…それしか考えられないし。
淳:だからもう、俺の事なんて嫌いに…
〇:そんな事ないッ!!!絶対ないからッ!!!

私は淳太くんに、強く抱きついた。

〇:もう…このまま離れたくない…
淳:・・・ホンマ…ゴメンな…

淳太くんは、私を強く抱きしめ返した。


*VOL49*
淳母:淳太〜?〇〇ちゃ〜ん?買い物行ってくるわぁ〜!弟くん達、揃って帰宅するから〜お願いねぇ〜!

ん?弟くん達?

淳太くんと私は、顔を見合わせた。

ハテナマーク?の淳太くんは、年上なのに可愛くて…
こんなところも好きだなぁ〜なんてね//

そのうち、淳太くんの弟と一緒に私の弟も淳太くんの家に帰ってきて、その後、淳太くんのお母さんは私のお母さんと帰ってきた。

〇:えっ?どういう事?
淳母:タコ買ってきたでぇ〜!
淳:おっ!タコパ?久しぶりやなぁ?なぁ?〇〇?
〇:うんっ!!!じゃあ私、手伝います!
淳母:あ、イイのイイの!お母さんふたりもおるんやから!〇〇ちゃんは、淳太の部屋で待っとってぇ〜!

淳太くんのお母さんは、耳元で「早よ行ってきぃ〜」と優しく背中を押してくれた。

嬉しかった。

でも…
この事件を きっかけに、私と淳太くんの問題は、それだけのモノでは無くなっていった。


*VOL50*
次の日の朝。
いつもの待ち合わせ場所に、結奈は居なかった。

大:おっはよぉ〜さんっ!
〇:あ、大くんおはよう…

やっぱり、結奈が居ないと静かだな。
てか、暗くなる。

電車のガタンゴトンが、いつまでも鳴り続けるんじゃないかと、少し怖かった。

今まで私が、結奈に どれだけ救われてきたのか思い知った。


〇:え?アレって…結奈だよね?
大:や〜見てんかったなぁ〜
〇:渡り廊下 歩いてたの、結奈と涼介さんに見えたんだけど…
大:ええやん、行こうや!

大くんに急かされて、そのまま校舎に入った。

結奈…
涼介さんに、想い 打ち明けたのかなぁ?
やっぱり私はもう、親友じゃないのかな?

やっぱり、教室に結奈は居なかった。

キーンコーンカーンコーン♪
チャイムが鳴り終わるのと同時に、結奈が戻ってきた。

やっぱり、私を見る事は無かった。


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