第11話

『 君といつか 』111 〜
165
2019/05/20 21:31
『君といつか』

*111*
大くんのベットの中は、少し大人な優しい香りがした。

腕枕で抱きしめながら、大くんは教えてくれた。

大:麗華が現れた時、俺と結奈は、淳太に頼まれたんや。「傍に居てあげられない俺の代わりに、〇〇を守ってやって欲しい」って。
〇:え…そうだったんだ…
大:そんな事 言われんでも、〇〇の事は俺が守るって思っとった。ずっと前からな。

涼介さんが近づいてきた事も、前もって淳太くんから聞いていたらしい。

結奈が本当に涼介さんに恋をしていたのは、誤算だったみたいだけど。

大:ずっと見てきた…〇〇を。何度、俺のものになれやって、心で叫んだか分からへん。やけど…こんな傍におる俺より、傍におらん淳太を信じてる〇〇の、そんなところも好きやったから…………素直に応援しとったハズなんやけどなぁ〜

そう言って照れて笑う大くんが、公園で星になろうかと考えていた心を、知らずに落ち着かせてくれていた。


*112*
〇:…どうして…あの公園に来たの?

私を探しに来てくれたのは、淳太くんではなく、その場に居なかった 大くんだったから。

大:淳太から連絡もらって。〇〇が飛び出して行ったって…


♪〜着信音〜♪
大:へい!どないし…
淳:大変や!〇〇が飛び出して行ったきり、家にも戻っとらん!俺が…〇〇を幸せにできんくなって…
大:おいッ!それ、どういう意味や!!!
淳:…麗華さんに……お、俺の子が……
大:…は?…それホンマなんか?
淳:…ホンマや…近々、籍も入れる。
大:そんなん……勝手 過ぎやろ!!!〇〇はな!どんだけ辛くても淋しくても、お前のことだけを信じとったんや!!!
淳:…お願いや…〇〇を守ってやって欲しい…
大:ぉまッ!フザけんなッ!!!
淳:やって…やってさ……大毅なら…
大:そんなん知るか!もう……〇〇に近付くなよ!


大:当てもなく探しとったんやけど、前に〇〇が話してたの思い出して。


*113*
〇:そっか…私、気付いたら、あそこに居て…星になろうかって考えてたら…大くんが来てくれた。
大:星にて…

大くんが私を抱き寄せると、おデコに唇が触れて…

大:そんな事…考えんでええ。これからは俺が〇〇を笑顔にしたる。泣かせるような事なんてしぃひんから……せやから…

バタバタッバタバタッ!!!
誰かが階段を駆け登る音が響くと、

ガチャガチャッ!!!
ドアを開けようとした。

ドンドンッ!!!

結:大毅ッ!いるのッ?何かあったのッ?!!!
大:もぉ〜何やねん!うっさいなぁ〜

大くんは、抱き寄せた私を毛布で隠した。

結:〇〇いるの?大丈夫なの?

結奈はチョット焦っていて、凄く心配そうに聞いてきた。

毛布から顔を出すと、大くんが半分笑顔のチョット困った顔をしていた。


*114*
〇:あ〜結奈?だ、大丈夫だよ。
結:あ!〇〇ッ!ホントのホントにッ?!
〇:う、うん…だから…後で行くから…部屋で待ってて?
結:…そ、そうなんだ…分かった。ゆっくりでイイからね。待ってるから。じゃね。

結奈は何かを悟ったのか、さっきまでの勢いが消え、部屋へ戻って行った。

大:ヤバイな、バレちゃったな?

そう言う大くんが笑顔だからかな…

〇:バレちゃったね(笑)

星になんて…なるのはやめよう。
そう思えた。

〇:私…行くね。
大:おん…
〇:…ッ///……//…
大:ん?どした?
〇:あ、のね…恥ずかしいから//…着替えてるところ…見ないで//……
大:お、おん// ええよ//…

私は脱ぎ散らかした服を拾い着替えると、
大くんを見ないように、部屋を出ようとした。

〇:じゃあね //!
大:あ、待って!

せっかく見ないようにしてたのに…
私はまた、大くんの腕の中へ戻された。


*115*
大:〇〇?俺の…彼女になって欲しいねん…絶対!傷つけへんから。
〇:・・・・・
大:せやな…スグには答えられへんよな?
〇:う、うん…
大:返事はいつでもええからな?待っとる!

そう言うと、おデコにチュッとして笑顔を見せてくれた。

真っ直ぐな瞳。
無邪気な笑顔。

この人に裏は無い。
この人なら裏切られるコトはない。

きっと普通の恋愛ができる。

そんな風に思った。

コンコンッ!
ドアをノックすると、結奈がゆっくりと開けてくれて、照れくさそうに「どうぞ」と言った。

私の心は、案外落ち着いていて、淳太くんへの想いが、少しずつ薄れていってるようだった。

〇:ごめんね…居るとは思わなかったよね?
結:淳太くんのところに行ってると思ってたら、玄関に〇〇の靴があって…いつもの〇〇なら揃えて置くのに、散らかってたから、何かあったのかと思って。

それであんなに慌ててたのか。


*116*
〇:・・・淳太くんね…パパになるんだって。
結:っ!えぇぇーーーッ!!!は、はぁ?マジかよ…

結奈もショックらしい。
そりゃぁ、そうだよね。
私と一緒に、何があっても淳太くんを信じてきたんだから。

〇:ごめんね。私が悪いの。
結:どうしてよ?〇〇 何かしたの?
〇:ううん。何も出来なかった私が悪いの。もっと頑張って淳太くんの傍に行けば良かった。淳太くんの心が、傾いてしまったのは…私のせい。
結:〇〇…
〇:結奈?いままでたくさん守ってくれてありがとね!私の事はもう大丈夫だから…結奈は結奈の人生を歩んで!
結:う、うん…

麗華さんに、淳太くんの子が出来たのは、本当にショックだ。

でも今、私は落ち着いている。
泣き腫らしていてもイイ程なのに…

〇:結奈に、ひとつだけ…隠してたコトがあるの。
結:…なに?
〇:私ね…大くんにドキドキしてたの。


*117*
結:…好き?…って事?
〇:…ずっと分からなかったんだけど……私…大くんを……受け入れた…
結:そっか…

それは、本当に不思議だった。
あんなに淳太くんしか考えられなかったのに。
あんなに頑なに信じるコトが出来ていたのに。

大くんは、すんなりと私に溶け込んでいった。

私は…

〇:救ってもらいたかった…誰かに。…大くんなら…大丈夫だと…心も体も自然に頷いたようだった…
結:そっか……じゃあ…大毅と付き合うの?
〇:まだ…返事してないんだけど……たぶん//
結:そっか…
〇:……ダメかなぁ?
結:え?ううん!賛成だよ!まぁ〜まさか、その前にあんな事になるとは、ビックリだけどね〜
〇:え?//あ〜ごめんね//

淳太くん…ごめんね。

私…きっと、淳太くんのコトをずっと前から…


裏切っていたんだ。



麗華さんと…


赤ちゃんと…


お幸せに。




さよなら。
淳太くん……


*118*
大くんに送ってもらって、家に着くと…

母:〇〇ッ!どこ行ってたのッ?淳太くんのお母さんが心配してたのよッ!
〇:え、あの…大くんのとこ…
母:大くんって…結奈ちゃんの?
〇:そう…

少し離れたところにいた大くんが、こっちへ来ると、

大:あのっ、心配かけて すんません。公園で〇〇が泣いてたんで、ウチに来てもらってたんです。ホンマ、すんません!

と、深々と頭を下げた。

〇:えっ、だ、大くんッ!頭上げてよ!大くん悪くないからっ!
母:そ、そうよ。お礼を言わなきゃならないくらいなのに!頭上げて〜
大:そうっすか…
母:…あの…いつも、ありがとね。

母の顔が一気に穏やかになり、不思議とこの場に、

大:え?や、いつもなんて、そんなっ!
母:照れなくてもイイのよ〜〇〇のヒーローなんだから!
〇:えっ//?なんで?なんでお母さん知ってるの?//
母:お母さんだからよぉ〜

笑顔が溢れた。


*119*
お母さんは きっと、淳太くんのお母さんに聞いていたみたいで、いつもよりも ずっと優しくしてくれた。

母:〇〇?大丈夫?

チャポンっ!
長風呂してる私に、そう声をかけてきたり。
お風呂が長いのは、いつもの事なのに…

そんな心配してる母を、安心させたかった。
それと、淳太くんのお母さんも。
たぶん私に、後ろめたい気持ちでいっぱいなんだろうな…
そう思うと…やっぱり辛かった。



ただ…




私は…



普通に…







人を好きになっただけなのに。







次の日。
私は、そんな皆んなの想いに、押し潰されそうで怖くて…

{〇:会いたい}

助けを求めていた。



*120*
結:帰ろっ!
〇:うん!あ、あのね// あの…だ、大くんがね//…ウチで待っててって//
結:ふ〜ん(ニヤ)
〇:な、なによ〜//
結:返事するん?
〇:えっ//…う、うん//
結:早かったね〜そんな悩まなかったんだ?
〇:うん…私の…ヒーローだから……


助けてくれる。
きっと、10年間の想いから…


結:〇〇さ〜ん?
〇:ん?
結:落ち着けば?大毅帰ってくる前に、宿題やんないと!
〇:まぁ〜そうなんだけどね…

ソワソワしちゃって、止まってられないのよ〜

こんな気持ち、ホントに久しぶりだから!
嬉しくて、でも恥ずかしくて〜//

夜中ずっと考えてたの。
大くんに、何て返事しようか。

もしかしたら、この先、こんな返事するコトなんてないかも知れない。

一生に一度かも…って思ったら、
言葉が見当たらなくて…

大:たっだいまぁ〜!

玄関から聞こえる声に、ビクッ!としてしまった。


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