私の提案に、明里ちゃんが驚愕する。
他のみんなも彼女と同意見のようで、複雑な表情を浮かべている。
みんなが風間くんを拒む気持ちはよく分かる。
私だって昨日今日と彼の心を聞かなければ、ひとりぼっちの彼を気にしながらも、見て見ぬふりをひてたと思う。
拳をぎゅっと握りしめ、恐る恐る口を開いた。
友達の意見に反対するのは初めてで、声が震えてしまった。
明里ちゃんもびっくりした顔を向けている。
みんなの不安を取り除けるよう言葉を選びながら、懸命に訴える。
拒絶されたらと思うと怖くて仕方なかった。
みんなはただただ目を丸くしていて、心の声も聞こえない。
そのことが、更に私を不安にさせた。
明里ちゃんと凛ちゃんが顔を見合わせる。
自分の顔がぱぁっと明るくなるのを感じた。
勇気を出して伝えてみて良かった……!
飛び跳ねたくなる気持ちを抑えていると、脳に聞き捨てならない二人の声が流れてくる。
え!? ち、違うよ!!
だから違うってー!!
そんなことをしたら、心を読めることがバレてしまう。
二人が思うほど、私、必死だったかなぁ?
ただ私は……。
そう思っただけ。
……うん、それだけだもん。
後ろからの声に驚いて振り向くと、背の高い風間くんが私を見下ろすようにして立っていた。
風間くんは何も答えない。
だけど、彼の心の声はしっかりと聞こえた。
彼の本音に、胸がきゅっと甘く締めつけられる。
私のことを心配して来てくれたの?
気持ち悪いだなんて、思わないよ……。
風間くんが窺うような目で私の後ろにいるみんなを見つめる。
だけど元々の目つきのせいか、みんなは睨まれたと思ってビクビクと怯えていた。
その中で腕組みをした明里ちゃんが、強気に一歩前に出る。
ちょ、ちょっと明里ちゃん!?
本人を前に一体、何を!?
風間くんの視線がこちらに向けられたような気がして、私はサッと俯く。
顔が熱い。
恥ずかしくて、心臓が破裂しちゃいそう。
ボソッと呟かれた声に、弾かれたように顔を上げる。
頭を下げる風間くんに、みんなが目を丸くする。
私はそう確信しながら、風間くんを見るみんなの目が、少しずつ良い方向に変わっていくのを感じていた。
自分の中に芽生えた小さな気持ちには、気づきもせずに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!