第3話

芽吹く感情
407
2021/01/24 06:24


私の提案に、明里ちゃんが驚愕する。



望月 明里
望月 明里
えぇ!? 澪、何言ってんの!?
白坂 澪
白坂 澪
だって、誰も声掛けてないし……
望月 明里
望月 明里
そりゃそうでしょ! 風間くんだよ!? 問題起こすに決まってるじゃん!

(何より怖いし!)




他のみんなも彼女と同意見のようで、複雑な表情を浮かべている。


白坂 澪
白坂 澪
……



みんなが風間くんを拒む気持ちはよく分かる。

私だって昨日今日と彼の心を聞かなければ、ひとりぼっちの彼を気にしながらも、見て見ぬふりをひてたと思う。



白坂 澪
白坂 澪
(でも私は、彼の純粋な一面を知ったから……)



拳をぎゅっと握りしめ、恐る恐る口を開いた。


白坂 澪
白坂 澪
き、決めつけるのは良くないんじゃないかな……


友達の意見に反対するのは初めてで、声が震えてしまった。


明里ちゃんもびっくりした顔を向けている。


白坂 澪
白坂 澪
ふ、不安な気持ちは良く分かるよ。でも……そんなに悪い人じゃないと思うの
望月 明里
望月 明里
澪……
白坂 澪
白坂 澪
も、もし問題を起こしそうになったら、私が止めるから! だから、その……


みんなの不安を取り除けるよう言葉を選びながら、懸命に訴える。

拒絶されたらと思うと怖くて仕方なかった。

みんなはただただ目を丸くしていて、心の声も聞こえない。

そのことが、更に私を不安にさせた。

明里ちゃんと凛ちゃんが顔を見合わせる。


榊原 凛
榊原 凛
まぁ……
望月 明里
望月 明里
澪がそこまで言うなら
白坂 澪
白坂 澪
ほんと!?



自分の顔がぱぁっと明るくなるのを感じた。

勇気を出して伝えてみて良かった……!

飛び跳ねたくなる気持ちを抑えていると、脳に聞き捨てならない二人の声が流れてくる。

榊原 凛
榊原 凛
(あんなに必死になって……。澪ったら、いつの間に風間くんのことを好きになっていたのかしら)



え!? ち、違うよ!!



望月 明里
望月 明里
(くっそー! 風間くんったら、いつ澪をたぶらかしたの!? 許せない……不良に嫁入りなんて、絶対にさせないんだからー!!)



だから違うってー!!



白坂 澪
白坂 澪
(うぅ……。否定したいのにできない……)



そんなことをしたら、心を読めることがバレてしまう。

二人が思うほど、私、必死だったかなぁ?

ただ私は……。



白坂 澪
白坂 澪
(校外学習をきっかけに、風間くんが怖いだけの人じゃないってことを、みんなにも知ってもらえたらなぁって……)



そう思っただけ。

……うん、それだけだもん。


白坂 澪
白坂 澪
わ、私! 風間くんを呼んでくる!
風間 蓮
風間 蓮
もうここにいるけど
白坂 澪
白坂 澪
えっ!?




後ろからの声に驚いて振り向くと、背の高い風間くんが私を見下ろすようにして立っていた。


白坂 澪
白坂 澪
ど、どうしてここに……?
風間 蓮
風間 蓮
……


風間くんは何も答えない。

だけど、彼の心の声はしっかりと聞こえた。


風間 蓮
風間 蓮
(俺の名前を呼ぶ白坂さんの声が聞こえて、しかも何か困ってるように見えたから)
白坂 澪
白坂 澪
……
風間 蓮
風間 蓮
(……なんて、友達でもない俺に言われても気持ち悪がられるだけだろうな)



彼の本音に、胸がきゅっと甘く締めつけられる。

私のことを心配して来てくれたの?

気持ち悪いだなんて、思わないよ……。


白坂 澪
白坂 澪
あ、あのね! 風間くん! もし良かったら、一緒の班にならない?
風間 蓮
風間 蓮
え? でも……

(他の奴らは嫌がるんじゃ……)



風間くんがうかがうような目で私の後ろにいるみんなを見つめる。

だけど元々の目つきのせいか、みんなは睨まれたと思ってビクビクと怯えていた。

その中で腕組みをした明里ちゃんが、強気に一歩前に出る。



望月 明里
望月 明里
み、澪が一生懸命私たちを説得したのよ!



ちょ、ちょっと明里ちゃん!?

本人を前に一体、何を!?


風間 蓮
風間 蓮
白坂さんが……?
望月 明里
望月 明里
そうよ! だから断ったりしたら、承知しないんだからね!!



風間くんの視線がこちらに向けられたような気がして、私はサッと俯く。

顔が熱い。

恥ずかしくて、心臓が破裂しちゃいそう。




風間 蓮
風間 蓮
……断らないよ
白坂 澪
白坂 澪
(えっ……?)




ボソッと呟かれた声に、弾かれたように顔を上げる。



風間 蓮
風間 蓮
入れてくれてありがとう



頭を下げる風間くんに、みんなが目を丸くする。
白坂 澪
白坂 澪
(やっぱり風間くんは素直な人だ)



私はそう確信しながら、風間くんを見るみんなの目が、少しずつ良い方向に変わっていくのを感じていた。


自分の中に芽生えた小さな気持ちには、気づきもせずに。



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