第2話

おはよう
429
2021/01/24 06:24
風間 蓮
風間 蓮
(ヤバ……。白坂さん、今日も可愛すぎる……)
風間 蓮
風間 蓮
(わ、ちょ、なんだよ!? そんな大きな目で見つめられたら……)
風間 蓮
風間 蓮
(ど……ドキドキしちゃうだろ……)
白坂 澪
白坂 澪
わーっ!!



かばっと上体を起こすと、そこは自分の部屋だった。

すぐ横にあるカーテンの隙間から、眩い朝日が差し込んでいる。



白坂 澪
白坂 澪
ゆ、夢……




まだ心臓がドキドキしてる。

昨日聞いた風間くんの心の声は、見た目と違って全然怖くなくて、胸がくすぐったくなるようなものばかりだった。

男の子に「可愛い」って言われたのは初めてだったから、ちょっぴり嬉しかったな……。


白坂 澪
白坂 澪
(いや、実際に言われたわけじゃないけど! 心の声が聞こえちゃっただけなんだけど!!)



朝の支度を整えながら、少し舞い上がってしまった自分を戒める。

自分の意思とは関係ないとはいえ、心の声を聞くなんて最低だ。

それに昨日はちょっと早とちりしちゃったけど、風間くんは私のことを「好き」とは言ってない。

でも、好意を持たれていることは確かなわけで……。




白坂 澪
白坂 澪
(と、とにかく! 昨日のことは忘れよう!)



私は何も聞かなかった。

登校する道すがら、私は何度もそう自分に言い聞かす。


白坂 澪
白坂 澪
(大丈夫。風間くんとは同じクラスってだけで、何も接点はないもの。朝だって、登校時間が重なったことは一度も……)



ない、と断言しようとしたその時、隣から下駄箱の扉をバンっと強く閉める音が聞こえた。

まさか……いや、風間くんのはずがない。

それでも確認してみようと、履いた上履きに向けていた視線を恐る恐る動かす。


風間 蓮
風間 蓮
……あ

(白坂さん)
白坂 澪
白坂 澪
!?


な、なんで!? いつもはもっと遅めの登校なのに!

二人の間に微妙な空気が流れる。

実は昨日、彼の心の声を聞いて恥ずかしくなった私は、ぶつかったことを謝ってから、逃げるように立ち去ってしまったのだ。



風間 蓮
風間 蓮
(どうしよう……)



うぅ……。風間くんも気まずいよね。
風間 蓮
風間 蓮
(挨拶したら、引かれるかな)
白坂 澪
白坂 澪
そっち!?





彼の心に思わずツッコミを入れてしまい、慌てて口を押さえる。

風間くんは何を驚かれたのか分からないといった顔で、目をパチパチと瞬かせていた。

このままじゃ不自然すぎる。

えーい、こうなったら……!



白坂 澪
白坂 澪
お、おはよう……
風間 蓮
風間 蓮



ぎこちない私の挨拶に、風間くんは目を丸くしたまま固まってしまった。

見た目では分からないけれど、私の脳に流れ込んでくる彼の心の声は、それはもう大変なことになっていた。



風間 蓮
風間 蓮
(し、白坂さんから挨拶してくれた!! なんで!? どうして!?)
風間 蓮
風間 蓮
(はっ! そういえば今日の魚座の運勢一位だったな。“早めの行動が吉”って、このことだったのか!!)


それでいつもより早く登校したの!?

謎が一つ解けたと同時に、彼が魚座だということも知る。

しかも、占いのアドバイスをちゃんと実行するなんて……。

白坂 澪
白坂 澪
(案外、素直な人なのかも?)




彼の意外な一面を知って、クスッと笑みがこぼれる。

そんな私の前で風間くんは、空いてしまった間を誤魔化すかのように咳払いすると、恥ずかしそうに目を伏せた。


風間 蓮
風間 蓮
……おはよう



それはとても小さな声だったけれど、私の耳にちゃんと届いた。



***



担任
担任
ーーと、いうことで今年の校外学習は浅草だ。今から男女六人グループを作って、各々行きたい場所を話し合うように



先生の指示に、みんなが席を立って動き出す。


望月 明里
望月 明里
澪ー! 凛ー! 一緒に回ろー!
白坂 澪
白坂 澪
うん
榊原 凛
榊原 凛
男子はどうする?
望月 明里
望月 明里
あそこに松井と小杉がいるじゃん。おーい!



明里ちゃんの声に気づいたサッカー部の松井くんと小杉くんが、手を振ってこちらにやってくる。

初めての関わりに少し緊張したけど、同じ部でマネージャーを務めている明里ちゃんが、うまく間に入ってくれた。




望月 明里
望月 明里
さて、男子はあともう一人だね
白坂 澪
白坂 澪
あっ、それなら……



みんなの視線が集まって、少し萎縮してしまう。

私は、机に突っ伏したままでいる風間くんの背中をちらりと見つめた。

こんなこと言ったら反対されるかもしれない。

でも、ひとりぼっちの人を放っておくなんてできないし……。


覚悟を決めた私は、ごくっと生唾を飲み込む。




白坂 澪
白坂 澪
か……風間くんを誘うのはどうかな

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