第9話

自分のためじゃなく、誰かのために
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2021/01/24 06:23
ガラの悪い他校生
ガラの悪い他校生
あれぇ〜? もしかして風間くんじゃないの?



制服をだらしなく着崩したガラの悪い五人の他校生が、ニヤニヤしながら私たちを取り囲む。

みんな髪を派手に染めていて、中には耳だけでなく鼻や唇にまでピアスを開けている人もいた。

この人たち、誰? どうしよう、すごく怖い……。



風間 蓮
風間 蓮
田所さん……。どうしてここに?


ガタイのいい彼がリーダーなのだろうか。

風間くんは怯える私を守るようにして立つと、見るからに乱暴そうな男に臆することなく尋ねた。
ガラの悪い他校生
ガラの悪い他校生
お前の高校が浅草で校外学習? っつーのをやるって聞いたからよぉ。思い出作りに一役買ってやろうと思って……な!
白坂 澪
白坂 澪
きゃっ!


握られた拳が思いきり振り上げられ、反射的に目を瞑ってしまった。

直後に聞こえた“ゴッ!”という鈍い音に慌てて目を開く。

風間くんが殴られてしまったのではと心配になったけど、彼は振り下ろされた拳を肘でしっかりと受け止めていて、私はホッと胸を撫で下ろした。




風間 蓮
風間 蓮
こんなところまで追ってくるなんて、ずいぶん暇なんですね。この前俺に負けたことがそんなに悔しかったんですか?



この前って……。もしかして、風間くんが「絡まれた」って言ってた他校生って、この人たちのこと?

でも、そんな挑発的な口調で言ったら、余計に怒りを買っちゃうんじゃ……。


ガラの悪い他校生
ガラの悪い他校生
なんだと……



ほらー! 赤鬼みたいな顔して怒ってるよー!

すくみ上がる私の前で風間くんはポケットから何かを取り出すと、怒りでわなわなと震える男に向かって小さなスプレーを噴射した。
ガラの悪い他校生
ガラの悪い他校生
うわっ!?


それは催涙スプレーだったようで、前方にいた三人の不良が痛そうに両目を押さえてうずくまる。


風間 蓮
風間 蓮
今だ! 白坂さん、走って!
白坂 澪
白坂 澪
う、うん!


彼に手を引かれ、西側の商店街へ向かって走り出す。

その後ろを私たちの後ろにいた二人の不良が、罵声を飛ばしながら追いかけてきた。

風間くんは息を切らしながら上手に人ごみをすり抜け、私を隠すようにして狭い路地に入り込む。


風間 蓮
風間 蓮
白坂さんはここにいて
白坂 澪
白坂 澪
えっ、風間くんは……!?
風間 蓮
風間 蓮
俺は大丈夫



そう言って笑うと、風間くんは自らが囮になるように再び広い路地に向かって飛び出した。

あっ、と伸ばした手の先で、二人の不良が彼を追いかけていくのが見える。


白坂 澪
白坂 澪
どうしよう……! 先生に助けを求めなきゃ……!



確か、しおりに緊急連絡先が書かれていたはず。

そう思って制服のポケットを探るが、走っている間に落としてしまったのか、見当たらない。


白坂 澪
白坂 澪
それなら戻って先生を……


でも、もしその間に風間くんの身に何かあったら?

最悪の事態を想像して、頭の中が真っ白になる。

どうしよう。どうしたらいいの? こんな時、私に彼を救える力があったら……!


白坂 澪
白坂 澪
……ある。あるじゃない


私にしか使えない、秘密の力。

なんの役にも立たないと思っていた、あの力が。

恐怖で震える拳を握りしめ、強く前を見据える。

白坂 澪
白坂 澪
……待っててね、風間くん



今、助けに行くから。



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