第10話

告白
308
2021/01/27 13:51


まずは風間くんが今、どこにいるかを見つけなきゃ。

走り出した私は、心の中で『ごめんなさい!』と謝ってから、周りにいた人たちに意識を向けた。

心の声を片っ端から拾い集め、風間くんの居場所を特定しようとしたのだ。

でもーー。





白坂 澪
白坂 澪
(うっ……頭がぐわんぐわんする……。気持ち悪い……っ)




今まで経験したことのない情報量が一気に頭に流れ込んできて、胃と脳がかき混ぜられているかのようだった。

猛烈な頭痛と吐き気に襲われ、額に脂汗が滲んでくる。

それでも私は走ることをやめなかった。

ーー風間くんを助けたい。

その一心で意識を向ける範囲を広げ、彼へと繋がる情報を探し続ける。



町の人
町の人
(なにあれ、ケンカ……?)
白坂 澪
白坂 澪


気づけばそこは、いくつかのビルが立ち並ぶ場所だった。

どこからか聞こえた女性の怪訝けげんそうなその声に、私は走るのをやめて辺りを見回す。

もしかしたらこの声の主は、風間くんのたちのことを見ているのかもしれない。

どこ? この女性はどこにいるの……?




白坂 澪
白坂 澪
(見つけた!)



20代くらいの若い女性が、ビルとビルの間にある細い道を見つめながら険しい顔で通過していく。

あそこに風間くんがいる。

そう確信した私は、女性のいた場所へと駆け寄った。

見るとそこは袋小路になっていて、壁を背にした風間くんが、退路を塞ぐ不良たちと睨み合いの攻防を繰り広げていた。



白坂 澪
白坂 澪
風間くん!
風間 蓮
風間 蓮
白坂さん……?

どうしてここに? とでも言うかのように、風間くんが目を丸くする。

よかった……。怪我はないみたい。

ホッとしたのも束の間、不良のひとりが隙を見せた風間くんに殴りかかる。

白坂 澪
白坂 澪
あっ、危ない!


私が叫ぶと、風間くんは間一髪でその攻撃を避けた。

すごい動体視力……。じゃなくて、もう一発来る!


白坂 澪
白坂 澪
風間くん! 次は右からパンチが飛んでくるよ!
風間 蓮
風間 蓮
え? うわっ!



驚きながらも風間くんは見事に攻撃を交わし、更にカウンターまでお見舞いした。

顎に彼のパンチを貰った男はその場に倒れ込んだけど、まだ安心はできない。

もうひとりいるのだ。



白坂 澪
白坂 澪
次は左!
風間 蓮
風間 蓮


私からの指示に彼は瞬時に反応し、もうひとりの男もあっという間に倒してしまった。

すごい、風間くんって強いんだ……!

それでも本当に怪我をしていないか確認したくて彼の元へと駆け寄ると、私を見上げた不良たちが化け物を見るかのような目でビクビクと怯え出した。

そして口々に「なんで俺の行動が読めるんだ……」「この女、気持ち悪ぃ……」と言って、後ずさるように逃げていく。



白坂 澪
白坂 澪
……


気持ち悪い、か……。

放たれた言葉が、遠い日に信頼した友人の言葉と合わさって、私の心を抉りつける。

風間 蓮
風間 蓮
白坂さん……


俯く私を呼ぶ風間くんの声には、困惑の色が滲んでいた。

心を読まなくてもそれだけで、彼が何を思っているのか伝わってくる。


『どうして自分がここにいると分かったのか』

『どうして彼らの行動の先を読めたのか』


はっきりと力を見せてしまった以上、彼に秘密を打ち明けなきゃ。

下手に誤魔化したり、嘘をついたりしたくない。

だって私は、“自分”を大切にする風間くんに憧れたから。

もう“自分”から逃げたくない。

風間くんとは……好きな人とは、いつだって真正面から向き合っていたいから。




白坂 澪
白坂 澪
ずっと……黙っていたんだけど……
 

風間くんの反応を見るのが怖くて、心臓がどくんどくんと重たい音を立てている。

それでも……と、覚悟を決めて打ち明けた。


白坂 澪
白坂 澪
私……人の心が読めるの

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