第6話

男の子の体温
319
2021/01/24 06:24
風間 蓮
風間 蓮
……他校の生徒に絡まれた
白坂 澪
白坂 澪
えっ……
風間 蓮
風間 蓮
昔からよくあることなんだ。“髪を染めてて生意気だ”って
白坂 澪
白坂 澪
そんな……



生まれ持ったものなのに……。

ケンカを売るための口実だと聞いても、胸が痛かった。

だけど私も、風間くんに絡んだ人たちと同じだ。

金髪というだけで染めていると決めつけ、周りの噂を鵜呑みにし、彼を不良だと思い込んでた。



白坂 澪
白坂 澪
……髪を黒く染めようとは思わないの?





そうすれば周りからも不良だと思われないし、危険なことにだって巻き込まれない。

彼の身を案じているからこそ口を出た言葉だった。

決して地毛を否定しているわけじゃないということは、風間くんも私の目を見て分かってくれたらしい。

それでも彼は首を小さく横に振り、「思わない」ときっぱり告げた。



風間 蓮
風間 蓮
そんな奴らのために今の自分を曲げたり、偽ったりするようなことはしたくない



芯のある言葉に胸を打たれる。



白坂 澪
白坂 澪
(すごいなぁ……)





風間くんは周りに左右されず、ちゃんと自分の意思を貫いてる。

それに比べて私はどうだろう。

人の心と空気を読んで、嫌われやしないかとビクビク怯えて。

周りから流れてくる負の感情が怖くて、飲み込まれる前にいつも逃げ出してた。

友達に意見をしたのだって、今日が初めてだ。

それも、すごく勇気を出してのことだった。




白坂 澪
白坂 澪
(私も、風間くんみたいに強くなりたいな……)



今までになかった想いが胸に芽生えた、その時。


風間 蓮
風間 蓮
っ、白坂さん!



慌てたような声と一緒に、彼の方へと身体が引き寄せられる。

気づいた時にはもう、風間くんに強く抱きしめられていた。




白坂 澪
白坂 澪
(えっ……)



突然のことに目を見張り、頭が一瞬で真っ白になった。

耳に聞こえる彼の激しい心音が、私の鼓動を掻き乱していく。

陽だまりのような匂いに、温かな体温。

まるで、お日様に抱きしめられているみたいだった。

長い時間に思えたけど、それは一瞬の出来事で。

猛スピードで走り去る自転車のベル音が、私を現実へと引き戻す。


風間 蓮
風間 蓮
危ねぇな……
白坂 澪
白坂 澪
……っ
風間 蓮
風間 蓮
白坂さん、大丈夫?



彼にすっぽりと覆われたまま、目が合う。

息が触れてしまいそうなほどの距離に、私たちは一瞬固まって、すぐにバッと身体を離した。


風間 蓮
風間 蓮
ご、ごめん……
白坂 澪
白坂 澪
だ、大丈夫……



顔を背けたまま、身体をぎゅっと抱きしめる。

本当は全然大丈夫じゃなかった。

心臓は破裂しそうなくらいドキドキしてるし、顔だって燃えるように熱い。


白坂 澪
白坂 澪
(男の子の腕があんなに力強いだなんて、知らなかった……)



抱きしめられた感覚が、いつまでも私の中に残ってる。

どうしよう。

どんな顔を向けたらいいのか、分からないよ……!


白坂 澪
白坂 澪
た、助けてくれてありがとう! 私、用事思い出したから、帰るね!!



パニックになった私は早口で告げ、風間くんと視線も合わさずにその場を逃げ出す。

後ろから「あっ……」と呼び止めるような声が聞こえたけど、振り向かなかった。

すごく感じの悪いことをしてしまったと反省する。

それでも、走り出した足は止まらない。






白坂 澪
白坂 澪
(私の心臓、壊れちゃったのかな)



風間くんが私を抱きしめたのは、咄嗟の行動だったって分かってる。

分かってるのに、どうして……





この胸のドキドキはおさまってくれないんだろう。



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