第4話

変わり始める距離
350
2021/01/24 06:24



班員が決定した私たちは、向かい合わせた机に地図を置き、自由行動で回る場所を話し合うことにした。



望月 明里
望月 明里
浅草といったら雷門でしょ!
松井くん
松井くん
なんかうまいもん食いたいよなー
榊原 凛
榊原 凛
体験学習……は難しいかしら
小杉くん
小杉くん
浅草神社にも行ってみたい!
望月 明里
望月 明里
澪は? 何かやりたいことある?
白坂 澪
白坂 澪
うーん、そうだなぁ……




明里ちゃんに尋ねられ、少し考える。



白坂 澪
白坂 澪
……人力車とか乗ってみたいかも
望月 明里
望月 明里
いいねー! イケメンの逞しい背中を拝みながらの観光!!




ははは……と、苦笑いを浮かべる。
 
私の求めているものとはちょっと違うけど、明里ちゃんらしい発想だ。



望月 明里
望月 明里
んー。どうやったら、みんなの希望に合わせて回れるのかなー



全員で「うーん」と首を捻る。

意見が出ることはいいことだけど、あれもこれもと欲張りすぎては、ゆっくり観光する時間がなくなってしまう。



望月 明里
望月 明里
ちょっと風間くん。黙ってないで何か良い意見はないの?
風間 蓮
風間 蓮
……


みんなの視線が私の向かいに座る風間くんに集まる。

明里ちゃん、私が風間くんのことを好きだって勘違いしているからかな。

元は優しい子なのに、彼への当たりが心なしか強い気がして、少しハラハラしてしまう。


白坂 澪
白坂 澪
明里ちゃん、あの……
風間 蓮
風間 蓮
全部を叶えることは難しいけど、プランならある
望月 明里
望月 明里
え?



風間くんが地図の上に人差し指をトンと置く。


風間 蓮
風間 蓮
雷門は別の班も候補に上げて混むだろうから、まずは人力車で軽く浅草を回ろう
望月 明里
望月 明里
……
風間 蓮
風間 蓮
そのあと雷門をくぐって、仲見世で美味しいものを食べながら歩く。絶対に目移りしちゃうから、立ち寄る店は予め決めておこうな。それから浅草寺へ。少し足を伸ばして浅草神社に行く
榊原 凛
榊原 凛
……
風間 蓮
風間 蓮
昼飯はアレルギーのやつがいなければ、おいしい蕎麦屋を知ってる。体験学習は時間的に難しいけど、見学はできるかもしれない。近くにとんぼ玉を売ってる店がーー
白坂 澪
白坂 澪
……
風間 蓮
風間 蓮
……なに?



ポカンとした顔で見つめる私たちに、風間くんが眉をひそめる。


明里ちゃんが感心したように言った。



望月 明里
望月 明里
……すごい
風間 蓮
風間 蓮
は?
望月 明里
望月 明里
すごいよ、風間くん! あなたリーダーシップあるのね!



興奮気味に褒める明里ちゃんに、困惑する風間くん。

だけど、グループのみんなが彼女と同じことを思っていた。

それぞれの意見に寄り添い、アレルギーに関しても配慮してくれたところに、彼の優しさを感じる。


望月 明里
望月 明里
見直したわ! ねぇ、私たちのリーダーになってよ!
風間 蓮
風間 蓮
え……

(俺なんかでいいのか……?)




そんな心の不安が聞こえた私は、向けられた戸惑いの目に満面の笑みで頷いた。

こんなにも頼りになるんだもん。

リーダーは風間くんしかいないよ。


風間 蓮
風間 蓮
えっと、それじゃあ……

(リーダーを任されるなんて、初めてだ……。頑張ろう……)


頑張って、風間くん。

照れくさそうに首の後ろを掻く彼に、みんなが期待の拍手を送った。





***





夕焼けに染まる、帰り道。


風間 蓮
風間 蓮
白坂さん!



声を掛けられ振り向くと、学校の方から風間くんが走ってくるのが見えた。

あんなに急いでどうしたんだろう?

立ち止まり待っていると、息を切らした彼が私の前へとやってきた。


白坂 澪
白坂 澪
どうしたの?
風間 蓮
風間 蓮
あ……いや……その……

(何やってんだよ、俺。白坂さんが待ってるんだから、早く言えって……!)



息を整えながら、何かを言おうとしている彼の様子をじっと見つめる。

夕陽のせいかな。

それとも、ここまで走ってきてくれたから?

普段は雪のように白く滑らかな彼の肌が、今はほんのりと赤く染まっているように見える。


風間 蓮
風間 蓮
い……
白坂 澪
白坂 澪
い?


なんだろう。

勝手に拾ってしまう彼の心情は自分を鼓舞する言葉ばかりで、何を伝えようとしているのか分からない。

風間くんが、意を決したように私を見つめる。



風間 蓮
風間 蓮
一緒に……帰ってもいい?

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