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第11話

恋せよ、テレパスガール(完)
454
2021/02/02 02:14
風間 蓮
風間 蓮
人の心が……読める?



私の言葉を繰り返した風間くんは、信じ難そうに眉をひそめる。

覚悟を決めて打ち明けたことだけれど、だんだんと不安が大きくなってきた。

信じてもらえないかもしれない。

信じたとしても、『気持ち悪い』って思われちゃうかもしれない。

好きな人に拒絶されたら、やっぱり辛いよ……。


風間 蓮
風間 蓮
白坂さん……



恋の終わりが見えたような気がして、心臓がどくっと大きく揺れた。

次の言葉を聞くのが怖い……。

耳を押さえる代わりに、目をぎゅっとつぶった瞬間ーー私の両肩は彼に力強く掴まれていた。



風間 蓮
風間 蓮
すごい!
白坂 澪
白坂 澪
……へ?
風間 蓮
風間 蓮
心が読めるなんてすごいよ! だって、怪我や病気でうまく喋れない人の力になれるってことだろ!?
白坂 澪
白坂 澪
……


そっか……。この力は、そういう風に使うこともできるんだ……。

人の心を読むなんて、最低な行為だと思っていた。

けれど、心を読むことで誰かの役に立てることもあるんだ……。



風間 蓮
風間 蓮
なぁ、ちょっと俺の心読んでみて!
白坂 澪
白坂 澪
えっ!? な、なんで!?
風間 蓮
風間 蓮
いいから! 実験!





彼の眩しすぎる眼差しを前に、断るなんてできなかった。

それに、無邪気な風間くんはなんだかちょっと可愛い。



白坂 澪
白坂 澪
……わかった
風間 蓮
風間 蓮
よし! じゃあ、いくよ

(今日はハンバーグが食べたい)
白坂 澪
白坂 澪
今日はハンバーグが食べたい
風間 蓮
風間 蓮
すげー!!



私は一体、なにをやらされているんだろう……。

遠い目をする私の前で、はしゃいでいた風間くんの表情がピタリと固まる。


風間 蓮
風間 蓮
……待って。それじゃあ、今までの俺の気持ちも全部伝わってたってこと?
白坂 澪
白坂 澪
全部……というと少し語弊ごへいがあるけど。私が風間くんに意識を向けちゃった時は、聞こえてた……かな



風間くんの表情がサーッと青ざめていくのがわかって、私は慌てて弁解をした。


白坂 澪
白坂 澪
あっ、でも聞こうとして聞いたわけじゃないよ! それに肝心なところは、まだ……
風間 蓮
風間 蓮
肝心なところ?



あ、余計なこと言っちゃったかも!

慌てて口を押さえるけれど、出てしまった言葉は戻らない。


白坂 澪
白坂 澪
えっと、その……


私のことを「好き」かどうかです、なんて自意識過剰すぎて言えない。

……あれ? ちょっと待って。

そうだよ、心の中で風間くんは私のことを『可愛い』って言ってくれたけど『好き』とは一度も言ってない。

『可愛い=好き』とは限らないんじゃないの?

も、もしかして私……とんでもない思い上がりをしていたのでは!?



風間 蓮
風間 蓮
……それならよかった



えっ、と顔を上げた先で、彼の真剣な眼差しとぶつかる。


風間 蓮
風間 蓮
俺、白坂さんのことが好きだよ



真っ直ぐな告白に、心臓が大きく跳ね上がる。


風間 蓮
風間 蓮
同じクラスになってから、ずっと見てた。心を読まれてたって、全然構わない。だって俺、白坂さんに聞かれたくない気持ちなんてひとつもないもん
白坂 澪
白坂 澪
風間くん……
風間 蓮
風間 蓮
……白坂さんの気持ちも、聞かせてもらっていいですか?


緊張しているのか、風間くんはかしこまった様子で尋ねてくる。

りんごのように赤くなった頬が、新鮮で可愛い。

私の気持ちなんて、ひとつに決まってるよ。


白坂 澪
白坂 澪
大好きです


笑顔で答える私に風間くんは一瞬だけ目を丸くして、それからすぐに、はにかんだ。

人の心を読む力がなかったとしても、きっと私は風間くんを好きになっていたと思う。

だって私は、彼の素直で真っ直ぐなところに惹かれたのだから。


***





思いを通わせた校外学習から2週間。


私と風間くんの交際を知った明里ちゃんと凛ちゃんは、「やっぱりね〜」と口を揃えた。


あの日。みんなと合流した私たちから、何か初々しいものを感じたらしい。


当日まで班のみんなをまとめあげた風間くんの評価は高く、2人とも私たちの恋を全力で応援してくれている。

そのことを嬉しく思いながら、私は放課後の図書室でひとり本を読んだいた。


今日は風間くんと一緒に帰る約束をしているのだ。


白坂 澪
白坂 澪
(「日直の仕事を終えたら行く」って言ってたし、そろそろ来るかな……ん?)



誰かが隣に座る気配がして振り向くと、そこにはにこりと微笑む風間くんがいた。

風間 蓮
風間 蓮
(お待たせ)


彼から送られてきたテレパシーに、『大丈夫』という意味を込めて微笑む。

開いていたページに栞を挟んでいたら、指で肩を優しく叩かれた。

なんだろうと思って振り向くと、いたずらっ子のように笑う彼と目が合う。

風間 蓮
風間 蓮
(静かにしなきゃいけない図書室でも、意思疎通できるからいいね)


ふふっ、ほんとだ。

と、いっても私は彼の気持ちに相槌を打つことしかできないけれど。

それでも十分だった。彼といると、この力の良いところがどんどん見つかるから不思議だ。

悩むこともあるだろう。

心を痛めることもあるだろう。

でも、以前のように下を向いたりは決してしない。

考え方で世界は変わる。

私にしかできないことがあるって、風間くんが教えてくれたから。



風間 蓮
風間 蓮
(白坂さん)

ん? なんだろう?

風間 蓮
風間 蓮
(好きだよ)
白坂 澪
白坂 澪
……っ!



この力は、恋を育てる秘密のスパイスにもなるらしい。

送られてきた突然の告白に、顔がぶわっと熱くなる。

そんな私を見て、風間くんは満足げに笑うのだった。



ーーENDーー

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