「桧山」
「ん?どうしたの?浦田くん」
「なにしてんの?次移動じゃん。遅れるよ?」
「ゆいちゃん、お手洗い行ってるから待ってるの」
「そ。じゃお先。まーしぃ行こうぜ」
浦田くんと月崎くん、本当仲良いな~。
「お待たせっ!」
「わ!びっくりした。もういきなりぶつかってこないでよ~!」
「うんうん。なんかトイレ混んでてさー」
「聞いてるー?」
「なぁ、そういや聞いた?」
「日向さん、坂田ってやつと付き合い始めたらしいよ」
「まじ!?ショックー」
えっ…。今、なんて……。
通りすがりの男子の会話。
彼らのとって、たわいもない話……。
その会話からわたしの今日1日分の元気が削がれた。
___やっぱりうまくいってたんだ………。
その後のことは、ほとんど覚えていない。
帰りにお母さんに買い物を頼まれたので、遠回りをしてスーパーで買ってきた。
買い物意外と時間かかったな……。
そのせいで雨に降られた。
傘持ってきてよかった。
"いつでも連絡してきなよ!あなた!"
ゆいちゃんに気を使わせちゃったな……
………たったったっ
「あなた!入れてー!」
え?
悠っ………。
なんで………?
「もうちょっとそっち寄ってや!」
「はわぁああぁ!ちょ、ちょっと、なにしてたの……?ここ通学路じゃないのに」
「駅まで人送ってたんよ。そしたら急に雨降ってきおったから、傘買うと高いし。あなたに会えてラッキーやったわ。」
「………日向さん?」
「え。……えっなんで!?」
「日向さん有名だもん。」
「あーうーん……。へへ」
何か言いたげな悠。
心なしか恥ずかしそう。
「なぁに?」
「あなたが背中押してくれたから」
………………。
「あっ!」
急に悠に引き寄せられた。
そう思ったら、すぐ横を車が通った。
「あ…ぶなー。ごめん。強くひっぱりすぎたわ。……どろかからんかった?」
いま、しかない……。
「……あなた?」
「………すき」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。