ゆいちゃんと帰ったけど、会話の内容なんてぜんっぜん覚えていない。
「ただいまぁ……。」
「おかえり、遅かったね」
「うーん……」
それどころか、ぼーっとしていたらいつの間にか知らない道に居た。
「あなたおかえりー!お邪魔してるで!」
「………はわぁぁぁ!!!」
「…そ、そんな驚くことないやん……。」
「晩ごはん誘ったのよ。悠くんのお父さん出張だから。」
「……あなた?」
どうしても意識してしまう。
悠のこと、…日向さんの言葉のこと……。
「わふ、わふ!」
「なんや?まろた」
「あ、そういえば、今日まろたの散歩行ってなかった……。」
「わ、わたしが行ってくる!」
「え。ちょ、あなた?!」
すごい勢いで家を出てきてしまった。
はぁ…。もう、つかれた………。
トン
肩になにか触れた感覚がした。
「おれも行く」
「はわぁぁぁぁ!!」
…気まずさから脱するはずが……。
まだ、まろたがいてよかった。
「今日は、星がいっぱい見えるで」
「昔、あの星とあの星を結んで、まろた座~とかやって遊んだよね?」
突然悠に顔を除き込まれた。
「そ、だっけ」
悠、ちかいよ……。
「……最近あなた変や。あなたが言わないなら聞かんでおこうと思っとったけど、おれなんかした?」
"坂田くんは、まっすぐで優しいですよね"
「悠。先週の放課後に___」
「え?」
「……!」
今までのモヤモヤを全て打ち明けよう。そう思った時、突然まろたが土手の下に向かって走り出した。
わたしは、まろたの走る勢いに負けて、高さのある場所から、土手の下まで真っ逆さまに……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。