「変だね。」
朝、学校に来てすぐゆいちゃんにわたしのことを相談した。
「ゆいちゃんが言うんだもん……。やっぱり変だよね……」
「うん。どーしたの?」
「自分でもわからないの……」
すきな人の名前を呼んだあの時の悠は、まるで知らない男の子みたいだった。
はー……。なんか、おなかいたい。
「……ってあれ?悠のシャーペン持って来ちゃった!!」
うわぁぁ!なんでこんな時に限ってー!昨日入れて来ちゃったんだ……。
………まぁ今はなんとなく会いたくないけど、悠も困るだろうし悠のクラスまで届けに行った。
1年生のフロアに行って悠を見つけ出した。
「今朝、なんで先、学校行ったん?」
「……きのうの事覚えてる?」
「寝ちゃったこと?」
「だよね」
覚えてるはずないよね!まぁ覚えててもこっちが恥ずかしいから良いんだけどさ!
「べつに……。遅刻しなかったんだしいいでしょ?」
ああまただ。おなかいたい……。
どうしてこんなに腹がたつんだろう。
「それはそうやけど……。なんか怒っとる……?俺、あなたと歩くの楽しいからさ、一緒に行きたかったんやけど……。」
………いたい。いたくてたまらないのは、
「あ、日向さんっ」
どうして……
「おはよっ!」
ああ、この子だ。ドアの前で振り向く美人さん。
「……おはよ」
ぺこっと会釈された。わたしも慌てて返した。けど……
「……めんくいだぁー」
「いやっ顔……も可愛いけどしれだけじゃなくてs…」
「いいよ聞きたくないっ」
あ、ち違うの……。
「…や……だって悠のそんな話、なんか恥ずかしいから、聞きたくない」
「えへへ、俺の方が恥ずかしいよ」
ふにゃっと笑う悠。いつも通りの悠だ。
…わたしは、
……うまく笑えただろうか。
あの後、悠と別れて走った。
人とぶつかりそうになっても、止まらず走った。
屋上まで全速力で。
「はぁ……。はぁ…。」
キーン コーン カーン コーン
……チャイム、鳴っちゃった……。
一時限目なんだっけ………
美術?あー……作品提出…………
「う"ぇぇ~……。脇腹いたい……」
「…………うっ。」
泣きたくないのに……。
痛いのは、おなかじゃなくて胸でしょ……。
日向さんって呼ぶ悠の顔がいたくて……。
つらくて……。
わたし、悠がすきなんだ。
いきなり失恋って……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!