第19話

兄と対面。
1,113
2021/08/06 14:47
あなた…………



頼む、起きてくれよ…………



あなた………………!
誰かがわたしの名前を呼んでいる。


聞いたことあるようで聞いたことの無い声。
あなた
蛍……?
違う。
あなた
一体、誰…………?
ピーピーピーピー
あなた
なに、この音……
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ハッ、
目を覚ます。


どこ、ここ。

また違うところに転生した?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
いや、病院?
もしかして、戻ってきた?

私は死んでなかったの?
鬼灯 夜
あなたっ!!目ぇ覚ましてよかった……!!
ギュッ
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
は、、え、だ、誰……?
鬼灯 夜
え、あ、、そっか、あなたには記憶が無いから
この人、スーツ着てる?大人?
でもわたしの名前を呼んでたし、わたしの知り合い……?いやでも、こんな人知らんし。
鬼灯 夜
いきなり抱きついて悪かった。
鬼灯 夜
俺は、鬼灯 夜。
お前の兄ちゃんだ!
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
は……?
鬼灯 夜
お前がトラックに跳ねられて。俺のとこに連絡が来たんだ。
鬼灯 夜
そして、今の今まで植物状態やったんや。
何、を言ってるの……?

今までずっと音沙汰がなく、

居場所も分からなかった兄が

今目の前にいる?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ふっwあははww
鬼灯 夜
あなた?
ふざけるな。

あんたのせいで、

あんたがいるせいで、

わたしは、あいつらに傷つけられた。

あんたがいなければ

わたしは愛されるはずだったのに……!
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
どうしてよ、どうしてわたしじゃ……
鬼灯 夜
あなた?どうしt……!?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ポロッ、、何の為にわたしは…ずっと…
6年前、両親が離婚し
母にはわたしを、父には兄を
裁判で決めた。

当時のわたしが12歳。兄が17歳。

この頃からの兄は頭が良くてかっこよくて誰にでも好かれる人だった。

だから両親も兄しか見てなかった。
どっちが兄といるか、それしか考えてなかった。

兄も、わたしを見ようとすらしなかった。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
なのに今更、兄貴ヅラ?
鬼灯 夜
あなた…あのさ……
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ふざけないでよ!
今までわたしが傷ついた意味はなんやったん?

今までずっとひとりぼっちやった。

わたしをひとりぼっちにさせたのは、

あなたもその一人。

なのに心配とか、ふざけんといてよ……
鬼灯 夜
昔、兄が兄の友達に言った言葉は今でも忘れられない。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
…………『顔も可愛くない、ノロマで勉強もできない、あんな…』
鬼灯 夜
(っあなたがなんでそれを……)
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
『あんな、要領悪くて何にもできない奴なんて妹でも何でもねーよw』
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
 だよね?
鬼灯 夜
そ、それはっ……
わたしが今17歳ということは兄が22歳。

兄の職業は医者。

昔、母が自慢げに話していたことを覚えている。

それに比べ、あんたは何も出来ない。

ただの社会のゴミだって、言っていた。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
なに?何にもできない妹を笑いにでも来たの?フッ
皮肉を込めた笑顔で兄を見つめ返す。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
あ、妹でもなんでもないんだっけ?
鬼灯 夜
ごめん……!!
鬼灯 夜
今までずっと、本当にごめんっ。
鬼灯 夜
ずっとずっと、お前を傷つけ苦しめてごめんな。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
……
鬼灯 夜
俺は、、兄ちゃん失格だな。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
……いいよ。ニコッ
鬼灯 夜
ほんとか!?
ヨルの顔色が明るくなる。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
なーんてね!すっきりしたっ?笑
鬼灯 夜
え……?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
私に許してもらって安心した?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
謝罪なんて、所詮自己満足。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
今日、わたしを訪ねたのは過去の精算がしたかったから、違う?
鬼灯 夜
それは……
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
わたしは、あんたたちを許すつもりはない。
多分一生。
鬼灯 夜
確かに、これはただの自己満足だ。
鬼灯 夜
多分俺は、あなたなら許してくれると心のどこかで思ってた。
それは、あんたたちの言いなりなわたしを知っているから、
鬼灯 夜
期待してたんだ。
弱くてちっぽけで、からっぽなわたしを知っているからでしょ?
鬼灯 夜
図々しいよな。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
うん、図々しいよ……。
ヨルは図々しくて、どこか、、

いつかのわたしに似ている。
鬼灯 夜
それで、俺、
鬼灯 夜
俺さ、お前と一緒に暮らしたいんだ。
鬼灯 夜
あなたが良ければ、だけど……
は、ちょっと待って、何でそうなるの?
話が跳躍しすぎてない?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
頭おかしいんじゃないの?
わたしは、許さないって言ってるんだよ?
鬼灯 夜
分かってる、でも俺
鬼灯 夜
お前が父さんと母さんに虐待されてること知らなかった。
鬼灯 夜
母さんの男にも、暴力を受けてるなんて知らなかった。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
だろうね、あんたはわたしのことなんて興味も示さなかった。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
妹…いや、あなたがどこで傷つこうとも、どこで怪我を作ってきても気にも、とめてなかった。
鬼灯 夜
そうだ、な
鬼灯 夜
俺もさ、医者になって、父さんや母さんからも仕送りをして欲しい、お前は私たちの自慢の息子だからできるって、ずっと言われてきた。
鬼灯 夜
それがずっとしんどかった。だから、今はあの人たちから縁を切って今を過しているんだ。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
だから?
鬼灯 夜
だから俺も、お前のk
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
自分も似た体験したから、わたしの気持ちが分かるって言いたいんでしょう?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ハハッ、分かるわけないじゃん……
ドンッと兄の胸を叩く。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
あんたとわたしじゃ、経験してる数が違う。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
一つ一つの重みが違う。
鬼灯 夜
あなたっ
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
帰って
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ヨルとは、一緒に住まない。
鬼灯 夜
あなたっ、話を……!
バタンッ
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
迷惑かけたことは謝罪する。
でも、ここには一生来ないで。
鬼灯 夜
あなた…………そのままでいい、そのままでいいから聞いて欲しい。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
……
鬼灯 夜
俺さ、結婚するんだ。
は……?

またあんただけ、幸せになるの?
鬼灯 夜
俺は、お前を傷つけてきた、だから償いがしたい。
 償い……
鬼灯 夜
彼女もお前が住むことには賛成してる。俺がお前にしてきたことも知ってる。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
だからそれが、
鬼灯 夜
俺のエゴだって分かってる!
鬼灯 夜
分かってるし、今からじゃ遅いのも分かってるけど
鬼灯 夜
俺はお前に幸せになって欲しい。
鬼灯 夜
笑って過ごして欲しい。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
だから、俺と住もうって?
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
バカバカしい。
その彼女も、上辺だけで
本当は、わたしと住みたくないって思ってるはず。
数々の男たちみたいに一緒に住んだら、
暴力を振るうなんて目に見えてる。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
わたしは、今でも十分シアワセだから、ほっといて。
煌がいなくなった今でも、

煌が教えてくれた愛と幸せがあるから、

この世界で生きていける……
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
ヨル兄 ・  ・  ・ や母といる方がしんどくて辛い、死にたくなるよ。
鬼灯 夜
(お前はまだ俺の事、兄だと呼んでくれるのか。)
鬼灯 夜
(兄らしいことなんて全然してやれてないのに)
鬼灯 夜
そうか、、なら、ここに俺の連絡先だけ置いていく。何かあったらいつでも連絡しなさい。
シンと静まる部屋、ドアの前には兄の名刺。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
こんなの………スッ…ピタッ
兄の名刺を破ろうとした。



…………破れなかった。

兄の全てが偽りだと

どうしても思えなかったから。

確かに

あいつのことは今でも嫌いだ、大嫌いだ。

憎むほど恨めしい存在であることには間違いない。

でもさ

わたしの心の弱さなのか

全てを憎悪でまとめることができなかったんだ。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
うっ、、っうぅ…ヒック、グスッ
煌に会いたい………

蛍や翔陽、にろ先輩たち……

あの温かな人たちに会いたいよ…………。
鬼灯(なまえ)
鬼灯あなた
あいたい……スゥ…
その日は、涙を流しながら眠った。

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