-授業-
あなたにとって、竜宮小で初めての授業が始まった。
さぁ!と意気込むあなたであったが、途中であることに気づいた。
教科書がないのだ。
迷惑かな?と思いつつも、隣の席である松田名作に頼むことにした。
おずおずと頼むあなたに、少し顔を染めながら承諾した。
見えやすいようにと、名作の提案で机をくっつける。
ノキオ・スウィーツ・ボルトの3人からのブーイングにツッコミを入れてから、名作は頭の中で思考をぐるぐると回していた。
どうやら名作の思考は完全にあなたにジャックされているようだ。
まぁ、当然こうなる。
ラッスィーに座れと言われてしまい、肩を落としながら座ろうとすると、ふいにあなたに目線があたる。
あなたは、大丈夫ですか?と心配するように少し首を傾けながら名作をみている。
あなたの必然的な上目遣いに、名作はまたもや思考をジャックされる。
授業に集中しようとしても、例の匂いがフワリと鼻先に触れる。
結局、授業には集中できなかったのは、言うまでもない。
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‐それから翌週…ぐらい‐
クラスの女子で話している最中、白ずきんが気になったのは、あなたのお団子ヘアー付けられていた簪だった。
あなたは上はお団子に着物、下は足袋にぞうりと、家柄もあり、いたって和風な服装だ。
しかし、簪はあまりつけない。
クラスメイトが見たことないのも、無理はない。
この質問にあなたは答える。
それもなんとも嬉しそうな、眩しいほどの笑顔で。
これにノキオ達が反応しないわけがない。
こっそり教室から抜け出そうという名作の作戦はあえなく失敗した。
しかし今回は(怖い笑顔を浮かべた)シャー田一も混ざっている。
問い詰められ、顔を染めながらあたふたする名作に、白ずきんはズバッと効果音の付いている台詞を放つ。
勿論あなたはなんのこっちゃ分かるはずがない。
なんの話かは、分からないが、名作に簪を貰い嬉しかったのは事実。
頭に着けている簪に手を当て、ふっと微笑む。
本来ならこの笑みは場を和ませる特効薬なのだか、今回はノキオ達の言い争いを激化させる火薬にすぎない。
言い争いの理由も、名作“達”の思考がどう変化したかも、あなたは知らない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!