第16話

勘違い
1,140
2018/02/02 09:34
「なんか、顔赤くね?」


「!?」


急に耳元で声が聞こえ、思わず肩がビクッと上がる。


「ゆ、勇我…」


もぉ、驚かせないでよ…


自分の世界に入り込んで周りが見えてなかった…


なんか変なこと口走ってないよ、ね…?


カップルみたい、とか…。


聞かれてたら恥ずかしすぎる!!


「熱あんじゃねぇ?」


「へ?」


「へ、ってお前…

顔、真っ赤だぞ。」


「えっ…」


多分それは…


と思ったけど、そんなこと言えない。


それも張本人に。


グイッと勇我が顔を近づけてきた。


「!?」


え、ちょ…


なんのつもり!?


まさか…


キ…?


ぎゅっと強く目を瞑った。


「!」


あ…れ…?


おでこにヒヤッとした感覚。


ゆっくり目を開けると、勇我と私のおでこがピタッとくっついてた。


え、え…


パチッ


超至近距離で勇我と目が合う。


かぁぁっ。


さらに体温上昇。


「ちょ、やめっ…

顔近いっ…」


私はバッと上半身を仰け反らせた。


「やっぱ、熱…」


勇我は平然とした顔でぼそっと言った。


熱はかるだけなら手でいいのに!!!


お、思わせぶりなことしないでよ…


「…あなた、さっきより顔赤くなってんだけど。」


「っ…」


ギクッ。


そりゃぁさぁ!!


「あ、もしかして…意識しちゃった?」


見上げるとニヤニヤした顔でこっちを見ている。


いつもの意地悪な勇我の顔だ…。


「顔赤かったのはそのせいか…」


「ち、違っ…」


いや、実際そーだけど!!


「まさか、キスされるとか思ったわけ?」


「!」


な、見破らないでよ!!


勘違い含め、さらに顔が赤くなる。


「何、図星?

アホか、オレたち兄妹じゃん。」


ぐ…。


ズシッと勇我の言葉が私に重くのしかかる。


…私の気持ち知っててこの仕打ちはありえない!!


「うっるさい!!」


叫ぶ私を無視して勇我は炊飯器からご飯を盛った。


最低!!


いじわる!


なんであんなやつっ…!


「ほら、食べんだろ?」


ふっと勇我が笑う。


勇我は…私のことなんとも思ってない。


好きな人が、こんなに近くにいるのに…


心の距離は遠く離れてる。

プリ小説オーディオドラマ