「おはよっ、あなた!
いよいよだねッ!!」
教室に着いて早々ガバッと後から飛び乗ってきたのは、顔を見なくてもわかる、愛衣だ。
「…おはよ、愛衣…」
私、さっきまでこんな沈んだ気持ちで学校に来るなんて思ってなかったよ。
起きた時は緊張しかなかったのに、不安がさらに乗っかった。
「えっ、あなた?
暗いけどどーしたの?
なんかあったの!?」
「あぁ、えーっとね…」
暗いのは、さっき、あんなことがあったから。
私がどーでもいいでしょ、と言ったのに対して、勇我は“確かに”って言った。
つまり、勇我は私が誰に告白しようとどーでもいいってこと。
今から告白しようとしてる相手に、そんなこと言われちゃうなんて…。
でもね、ちゃんと手紙は入れてきたんだ。
勇我の靴箱に。
帰る時には絶対見る。
だから…来て。
手紙には前と同じセリフ。
それ以外にも、書いておいた。
『勇我にとってはどーでもいいかもしれないけど、お願いします。
これで最後にするから。』
本当に本当にこれが最後。
授業中は上の空。
先生と友達に何回注意されたことか…。
だって、ねぇ?
しょうがないじゃん。
放課後告白するんだから。
私の、大好きな人に。
なんて思われるかな?
振られちゃうかな?
…なんて、今更考えることじゃない。
私の場合はそれ以前、勇我がベンチに来てくれるかどうかが問題。
ホントは聞きたくないと思うんだよね。
妹からの告白なんて。
絶対気まずいじゃん。
だったら告白するなよって話なんだけど…
ごめんね。
私のワガママ。
振ってくれないと、前に進めない気がするから。
ごめんね。
許して?
ーキーンコーンカーンコーン
6時間目の終わりを告げるチャイムが、学校に鳴り響く。
トクンッ。
トクンッ。
どうか、勇我が来てくれますように。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!