怜我くんに、全部話した。
勇我に告ったことも、まだ好きなことも。
ただ、会議室にいたあの女の子のことは言わなかったけど。
もしかしたら、あの二人付き合ってるかもしれないし、勇我って色々言われるの嫌そうだから。
怜我くんは最初驚いた顔してたけど、責めたり引いたりしないで最後までしっかり聞いてくれた。
なんか、話したらスッキリした。
モヤモヤがスーッと無くなって、逆に、何ごちゃごちゃ悩んでんだろうって。
「偉いね、あなたは。」
「へ?」
偉い??
「だって、自分の気持ちに正直で、それをちゃんと相談できるじゃん。」
怜我くん…?
「怜我くんも、なにか悩んでるの?
だったら、相談乗るんだけど…」
怜我くんも好きな人とかいるのかな?
でも怜我くん、カッコイイしモテそうだし、恋愛に困ることないだろうに。
そーいえば、恋愛事情何も知らないや。
前に歩夢が『直哉には彼女がいる!』とか言ってたけど、怜我くんの浮いた話、聞いたことないなぁ。
「え、ないよ?
あー、オレはね、それ以前の問題なわけですよ。」
「えっ?」
「オレ、好きな人いたことないし。」
「え。」
好きな人が、いたことない…?
それじゃぁ…
「初恋もまだ!?」
「まぁ、そーゆーことになるかな。
オレ、恋愛感情が欠落してるのかな?」
ははっと笑いながらもどこか切なそうな怜我くん。
「そんなことないよっ!
きっと見つかるって!」
そっかぁ、初恋もまだかぁ。
なんか意外。
彼女いそうなのに〜。
「ふふっ。」
なんか変な感じ。
男の子と恋バナしてるなんて。
それに、自分の兄と。
「あ、笑ったな!?」
「へっ!
いや違うよっ!
怜我くんのことに笑ったんじゃなくて!!」
誤解しないで〜!?
「あははっ、必死すぎ。」
怜我くんに笑われちゃった。
ドアの向こうからチャイムの鳴る音が聞こえる。
「そろそろ行かなきゃね。」
立ち上がった怜我くんが言う。
「うんっ。
話聞いてくれてありがと。」
気持ちが軽くなった。
「いえいえっ!
またいつでも相談乗るからさっ。」
優しいなぁ、ほんと。
怜我くんの彼女さんはきっと幸せだね。
「あ、怜我くんっ、このことはくれぐれも他言無用で…」
私が手を合わせると、怜我くんはニコッと笑った。
「もちろん、内緒な!」
こんなに優しい怜我くんがいるのに…。
なんで私は、怜我くんじゃなくてアイツなんだろ。
なんで勇我のこと…。
“好き”って気持ちに、理由なんてないのかな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。