I side
目を開けるとそこは…
桜で染まっていた。
さっきより強く吹き抜ける風。
風に乗ってひらひらと舞う桜の花びら。
そして、その真ん中で、歌う一人の青年がいた。
顔は桜の花びらでよく見えない。
でも、どこか整った顔立ちな気がした。
青年と目が合った。
綺麗な桃色の瞳をしていた。
なんで…
俺の活動名を知っているのだろう…
しかも今、「まろ」って…
え、リスナーさん…?
ツッコミいいな(
そうやって、どこか寂しげに笑う彼は、
どこか、見覚えがある気がして、
懐かしくて、
温かくて。
急に、目眩がした。
地面にしゃがみこむ。
頭が回らない。
空と地面が回転している。
ビュウッ
周りに落ちていた沢山の桜の花びらが一斉に舞い上がる。
青年が言った瞬間、俺の意識が薄れていく。
消えていく意識の中、力の限り手を伸ばす。
その、手を伸ばした先は…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!