Iside
暗闇の中にいた。
真っ暗で、
なにも見えなくて、
自分がいるのかすらもわからないような暗闇だった。
怖かった。
ただ、暗闇の中に俺は立ちすくんでいた。
…ふと、風が吹いてきた。
暖かい、春の風。
そして、その風に乗って…
歌声が、聴こえてきた。
少し特徴的な声だった。
声質で一番近いのは「低音イケボ」という感じ…?
そして、このメロディ…
たぶん相当練習したのだろう、
ブレスのタイミング、音程、リズム、全てが完璧だった。
そして、どこか…
懐かしさを感じた。
俺は、気づいたら歌声の聴こえてくる方へと走り出していた。
息が切れる。
いつまでたっても終わりが見えない闇の中。
それでも、俺は走っていた。
そうしないと、大切な何かが消えてしまうような気がして。
ただ、歌声を追いかけていた。
ビューッ
強い風が吹いた。
思わず目を瞑る。
そして、目を開けるとそこは…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。