※先生 ×生徒
※標準語











高橋side








「高橋！」





今日もいつものように朝から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた





高橋「おー、先生おはよ」





呑気に挨拶すれば、呆れた顔で近づいてくる生徒指導の西畑先生





西畑「シャツ、ちゃんと入れろっていつも言ってるだろ」



高橋「え〜、こっちの方がおしゃれなのに」




西畑「あのなぁ」




高橋「はいはい、直しますよ〜」





普通は嫌われがちな生徒指導だけど、西畑先生の場合は若くて、なんだかんだ優しくて、皆から人気だ




西畑「そういえば」




高橋「ん？」




西畑「こないだ部活中のお前見たんだけどさ」


       「やっぱりめちゃくちゃバスケ上手いんだな」



高橋「普通っすよ」



西畑「いや、上手いよ」


 
高橋「、、、あざっす」



西畑「今度フリースロー対決でもするか？」



高橋「先生ボロ負けするんで辞めといた方がいいっすよ」



西畑「おい、決めつけんな笑」





じゃあ、今日も頑張れよと言って先生は去っていった


 

毎朝恒例のこのくだり




これがないと俺の一日は始まらない






よっ、と幼なじみの道枝に声をかけられた




道枝「相変わらず西畑先生と仲良いな」




高橋「そんなことないけど」




道枝「そういえばさ、西畑先生恋人いるって知ってた？」




高橋「、、知ってる」




道枝「いいなぁ〜、リア充羨ましい〜」


       「どんな人なのかな、先生の恋人」





胸の辺りがぎゅっと苦しくなる





道枝「今度先生に聞いてみよーぜ」



高橋「、、俺はパス」



道枝「なんだよー、つまんねぇなー」







俺は先生のことが好きだ





理由を聞かれてもわからない、直感でこの人が好きだって思った




昔から恋愛ごとに疎い俺は、誰かを好きになるのはこんなに厄介なのかと毎日思い知らされてる




些細なことで俺を一喜一憂させる先生を恨めしいとも思う




先生に恋人がいると知ったのは、クラスメイトと先生が雑談してるのを聞いた時だった





生徒「先生ってモテんの？」



西畑「モテないよ笑」


       「一応付き合ってる人はいるけど」



生徒「えぇ？まじ？」



西畑「そんな驚くことか？笑」





先生と付き合えるんじゃないかなんてそんな高望みはしてなかったはずなのに、俺はぐさりと鋭いもので刺された気分だった




それを聞いたすぐは先生と話す時にぎこちなくなってしまったけど、案外すぐ元に戻れた





西畑「ネクタイ緩いぞ」




高橋「もう〜細かいな〜」




西畑「仕事なんで」



高橋「普段もどうせ細かくてこだわり強いんでしょ」


     「嫌われちゃうよ」




西畑「心配してくれてどうも」



 「でも案外自分のことは適当だし大雑把だから大丈夫」





高橋「へぇ〜、意外と人間っぽいとこあるんだね、先生」




西畑「俺の事なんだと思ってんだよ笑」





生徒指導と手のかかる生徒、ただそれだけの関係で十分だった








西畑「お前さ、前髪長くないか？」


       「前見えてる？」




高橋「見えてますよ。俺目いいし」





西畑「そういう問題じゃないから笑」


 「もうすぐで卒業式なんだから切ってこいよ」




高橋「、、、先生が切ってよ」



西畑「え？」



高橋「俺面倒くさがりだし、忘れっぽいからさ」


        「今度先生が切ってよ、俺の前髪」




西畑「俺上手くないけど」




高橋「いいよ、別に」




西畑「んー、、、わかった笑」




やっぱりこの人はなんだかんだ優しい










西畑「ほら、ここ座って」





放課後の夕日が差し込む生徒指導室




俺と先生の二人きり





高橋「ほんとに切ってくれるんだ」




西畑「お前が頼んだんだろ笑」




高橋「そうでした笑」





俺と向かい合わせに座って、慎重に前髪を切り始める先生





西畑「やばい、めっちゃ緊張する」




高橋「失敗したら、一生憎みますから」




西畑「一生は重いだろ笑」






先生の顔がすぐ目の前にある





こんなに近づいたことはないから、俺の心臓の音が先生に聞こえるんじゃないかと心配だった





有難いことに、先生は俺の前髪に集中してるから先生の顔をしっかり見ることができる





先生が切った髪を手で払う






西畑「結構いい感じかも」





高橋「先生」





西畑「ん？」






俺は先生に唇を重ねた





ゆっくり顔を離すと、驚いた顔の先生が俺を見つめる






高橋「好きでした、先生のこと」



「最後にわがまま聞いてくれて、ありがとうございました」





西畑「高橋、、」





俺は失礼しますと言って部屋を飛び出した





切った髪が目に入ったせいか、俺の視界は滲んでいた








卒業式の日の朝、西畑先生とばったり会った





西畑「今日は服装ちゃんとしてるな」




高橋「さすがに今日ぐらいはね」




西畑「いつもちゃんとしてくれてたら助かったんだけどな」




高橋「すみませんね笑」





西畑「高橋」




    「卒業おめでとう、そんで、、ありがとな」






頭をぽんと撫でられて先生が離れていった









先生、俺がいつもだらしない格好をしてたのは先生に話しかけて欲しかったからだよ





先生に構って欲しくて、それ以外に方法が見つからなくて、





手のかかる生徒でごめんね





本当に本当に、好きでした







fin