一通り分けられた森羅は、ふぅ、と息をついて汗を拭った。
森羅は姿の見えない空緒桜に返事をすると、置いていたダンボールを再び持ち上げた。
歩き出そうとした森羅は、ふと近くの棚に写真立てが伏せてあるのに気がついた。
写真立てということはわかるが、伏せてあるため、何の写真なのかわからない。
森羅はそう言うと、1度ダンボールを置いて写真立てを手にした。
立てたら自分の仕事に戻ろうと考えていた森羅だったが、その時見えた写真に動きを止めた。
その写真には、幼い少女と、少し背の高い青年が仲良さそうに笑っていた。
そのうちの少女の方は、髪や瞳の色が空緒桜と同じで、とことなく面影があるような気がした。
今ではあまり考えられない屈託のない笑顔に癒されるが、隣の青年に首を傾げる。
紅い髪に、同じく紅い瞳の青年は、紅丸とは似ても似つかない。
しかし、青年と少女の雰囲気はどこか似ているような気がして。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!