第32話

②𝙽𝙸𝙽𝙴『過去1』
3,970
2023/04/19 15:54
──2年前…







カンカンカンカン

町中が炎に包まれ、町人たちの悲鳴で溢れ、辺りに鐘の音が響いた。

ボッ

新門紅丸
新門紅丸
はぁっ、はぁっ、はぁっ
焜炉
焜炉
はぁっ、はぁっ、はぁっ
紅丸と焜炉は、肩で息をしながら鎮魂をしていた。
新門紅丸
新門紅丸
どうなってやがる…なんで1晩でこんな…”焔ビト”化が起こるんだ…
紅丸は遠くを見つめた。
焜炉
焜炉
とにかく今は、町民を無事避難させねぇと…アオに任せてあるが、アオだけじゃやりきれねぇ…火消しも頼んだから尚更だ…
新門紅丸
新門紅丸
んなことしてたら、アオも力尽きちまう…特殊消防隊は…?アイツら、いつになったら来るんだ…
焜炉
焜炉
あてにしてらんねぇ…俺たちでやるぞ。
そう言って2人は歩き出そうとした。
新門紅丸
新門紅丸
(ガッ
だが、足を引きずった紅丸が躓いた。
新門紅丸
新門紅丸
うっ…
焜炉
焜炉
紅!
咄嗟に近くの置物にもたれかかる。焜炉が近づくと、紅丸は苦しそうに息をした。
新門紅丸
新門紅丸
はぁっ…くそ、息が…はぁっ…いくら吸っても酸素が…はぁっ…入っていく気がしねぇ…
焜炉
焜炉
発火限界、か…紅はここに残ってろ。
新門紅丸
新門紅丸
馬鹿野郎!お前も似たようなもんだろ!?

ボウッ

紅丸が叫んだとき、近くの家から一段と火が上がった。

カッ…カンッカンッ……

その勢いで、不意に何かが2人の足元に転がった。
新門紅丸
新門紅丸
ッッ!!
焜炉
焜炉
これは…!
それは空緒桜の扇子だった。2人は目を見開いた。
焔ビト
ヴヴヴゥゥアアアァア
すると、家の中から”焔ビト”が出てきた。頭には角が生えている。
如月空緒桜
如月空緒桜
…ゴホッ
その”焔ビト”は空緒桜の首を掴んでいた。空緒桜は傷だらけで苦しそうにする。
新門紅丸
新門紅丸
アオ!!
焜炉
焜炉
なんだアイツは…鬼!?
焔ビト
ヴヴヴゥゥアアアァア!!
”焔ビト”は2人を見つけると大きな声で唸った。

メキメキッ

その声と比例するように、”焔ビト”の手に力が篭った。
如月空緒桜
如月空緒桜
…ッは、ぁ…ぅ…ッ
空緒桜の体が僅かに仰け反った。
新門紅丸
新門紅丸
ッ離しやかれクソが!!
紅丸は怒りに任せて飛びかかろうとした。一方で焜炉は、”焔ビト”を呆然と見つめた。
焜炉
焜炉
(この”焔ビト”…コイツは…やばい!!)

ドンッ

新門紅丸
新門紅丸
そう考えると、焜炉は横へ紅丸を押した。
新門紅丸
新門紅丸
ッ何しやがる!焜炉ー!

ガラガラッ

紅丸は叫ぶが、勢いに逆らえずに瓦礫に埋もれた。
焜炉
焜炉
こうでもしねぇと大人しくしてねぇだろ…お前みてぇな暴れん坊はよ…

ボッ

焜炉は体から炎を出すと”焔ビト”と向き合った。
焜炉
焜炉
(紅は…こんなところで終わるタマじゃねぇ!)
如月空緒桜
如月空緒桜
…、
空緒桜は意識を失ってぐったりとする。
焜炉
焜炉
(待ってろ…お前は絶対に死なせねぇ!コイツは、俺が…!)
→𝑁𝐸𝑋𝑇

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