第78話

⑦𝚂𝙸𝚇『愉快王』
2,333
2023/04/20 07:16
戻ってきた焜炉は、紅丸と桜備の前に日本酒と器を2つ置いた。
桜備
桜備
日本酒ですか。
キョトンとする桜備に、空緒桜は器に日本酒を注いだ。
如月空緒桜
如月空緒桜
盃を交わして、互いの友好の証とする…原国の同朋の儀式です。
空緒桜はそう言いながら、器の1つを紅丸に渡した。
如月空緒桜
如月空緒桜
どうぞ。
新門紅丸
新門紅丸
ありがとな。
紅丸が受け取り、返事をするのを聞いてから、もう1つの日本酒の器を桜備に向けた。
如月空緒桜
如月空緒桜
その意味通り、盃を交わす必要がありますが…お酒はお嫌いですか?
桜備
桜備
大好きです。
如月空緒桜
如月空緒桜
それなら良かったです。
即答する桜備にニコリと笑うと、空緒桜は器を手渡した。

クイッ

桜備と紅丸は、同時に日本酒を喉に通した。
桜備
桜備
…これで第7と第8は、友となれたわけですね。
日本酒の味に息をつきながら桜備が言うと、紅丸がゆっくりと顔を上げた。
新門紅丸
新門紅丸
よろしくな。
その顔には、いつもの紅丸からは想像もできない程の優しい笑顔が浮かんでいた。
環
え、めっちゃ笑顔。
森羅
森羅
どーなってんだ、あの顔…
茉希
茉希
そんなに私たちと仲良くなれて嬉しいんでしょうか…
森羅たちの反応に、空緒桜は苦笑いを浮かべた。
如月空緒桜
如月空緒桜
…またやっちゃいましたね、若。
焜炉
焜炉
…そうだな。
隣でニコニコと笑う紅丸を見て焜炉も空緒桜と同じように苦笑いを浮かべた。
焜炉
焜炉
紅は、酒が入ると笑顔が止まらない、”愉快王”になっちまうんだ。
新門紅丸
新門紅丸
俺のどこが愉快なんだ。
如月空緒桜
如月空緒桜
今がまさにそうですよ。
焜炉の言葉に、空緒桜も相槌を打つ。紅丸は気にせず、少し身長差のある桜備を見上げた。
新門紅丸
新門紅丸
桜備秋樽だったな。何かあったらいつでも呼んでくれ。
桜備
桜備
はい。盃を交わした仲ですから。互いに協力していきましょう。
桜備はそう言いながら、紅丸の笑顔を見つめた。
桜備
桜備
(…この笑顔、調子狂うなぁ…)
桜備は違和感を受け入れきれずに探るような目を向けた。
森羅
森羅
いや、それにしても…
ふと呟いた森羅は、次の瞬間ぶはっと吹き出した。
森羅
森羅
だっはっはっはっ!
あーっはっはっはっ!!
大きな声で笑う森羅に、第8は呆気に取られる。紅丸は相変わらずの笑顔で森羅を見た。
新門紅丸
新門紅丸
…何が面白い、クソガキ。
如月空緒桜
如月空緒桜
…ふっ
説得力のないその笑顔に、空緒桜も小さく笑って顔を背けていた。
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