第15話

同じ事を思って
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2019/06/20 08:26
なんか、さっきから苦しい…。息が上手く出来ない。

自分なりにゆっくり呼吸をしようとするけど、焦っ

てしまって逆に苦しくなる。ナースコールを押そう

とするけど、意識が朦朧として視界が霞んでいく。
あなた

(誰か、助けて…)

あなた

(あとちょっと頑張れば、お兄ちゃんか誰か来てくれるはず…)

そんな事を思っているうちに、視界は暗闇へと吸い

込まれていった。










長いこと眠っていたのだろう。体を動かすと少し痛

んだ。辺りを見渡すと、見知らぬ機械が置かれてい

た。今までしていなかった酸素マスクもしている。

そして、私の握られている手に視線を落とす。
あなた

おにぃ…ちゃん、?

私の手を握ったまま、ベットに突っ伏して寝ている

せいで顔が見えない。多分、着ている洋服からして

お兄ちゃんだろう。
大吾
ん、…あなた?
起きたんか!?
大吾
ちょっと待っとってや!
先生呼んでくる
あなた

う、うん

ものすごい早さで病室から出ていった。
先生
うん、良くなってよかった。
あなたさん、お兄ちゃんに感謝やね
あなた

??

先生
ほな、また何かあったら呼んでください。
お大事に
大吾
ホンマよかった。このまま目覚まさんかったら、どーしようかと思ったわ…
あなた

ごめんね。急にやって、パニックになってもうて

大吾
恭平も心配しとったで
電話してあげたらええんちゃう?
そう言って、病室から出て行ってくれるお兄ちゃ

ん。別に居てもいいのだけど、お兄ちゃんなりの優

しさの配慮なのだろう。
恭平
あなた?
あなた

うん

恭平
もう大丈夫なん?
俺…あなたに何かあったら、…
あなた

ごめんね。もう大丈夫だから、

大好きな人の声を聞いたら、なんだか急に安心し

て。恭平も泣きそうになっていて。涙がこぼれた。
あなた

(会いたい…)

会いたいという気持ちはそっと胸の奥にしまって、

代わりの言葉を発する。
あなた

大好き…

恭平
!…俺もやで
明日は会いに行くから
ちゃんと気持ちが伝わって、恭平も同じ事を思って

いたということに体が熱くなる。
恭平
今日はゆっくり休んでな。
おやすみ
あなた

ありがとう
おやすみなさい

タイミングよくお兄ちゃんが入ってくる。
大吾
帰るけど、大丈夫やんな?
あなた

うん、大丈夫!
ごめんね、遅くまで居させちゃって

大吾
ええよ、気にせんで
優しく微笑んで、私の着替えが入った大きなバック

を肩に掛ける。
大吾
じゃ、おやすみ
あなた

おやすみなさい

お兄ちゃんを見送って、ベッドの上で考える。

早く明日になれ。恭平に早く会いたいなって。

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