第5話

ー誰にも愛されたことなどなかった。ー
236
2021/05/30 07:37
休憩を途中途中挟みながら計5時間歩き進んでいた


疲れを感じながらも少しでも早く海に着く為にと

無理に足を動かしていた




寂れたスーパーでおにぎりとお茶を買い


裏手に回り込む





気がつけばもう午後1時になっていた



あとどれ位なんだろう……










流花
流花
私…
千尋に嘘ついてたことがあるの
千尋
千尋
嘘?
流花
流花
新しいママね、パパとの間に赤ちゃんができたの知ってるでしょ?
弟が生まれてから、ママ……私に見向きもしなくなった。
ご飯も自分で用意しろって言うようになって…
千尋
千尋
そうだったんだ
流花
流花
いつの間にか愛情が偏っていった
パパがいる時は前のママに戻るんだけどね




流花は困った顔をして笑った





ああ…



流花のこの笑った顔だけは苦手だ



自分一人我慢してればいい

そんなふうに思っているから…







千尋
千尋
じゃあ、僕らは嫌な共通点で繋がってるんだね
流花
流花
共通点……
千尋
千尋
愛されてないじゃないか
まあ、でも流花はパパと産んでくれたママには愛されていたけれど…
流花
流花
でも新しいママには愛されてなかったよ
一緒だね
千尋
千尋
うん。一緒
だからもう独りじゃないよ流花




流花の手を握ると微かな震えは既に無くなっていた

プリ小説オーディオドラマ