第2話

ーそれじゃ、僕も連れてって。ー
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2021/05/29 12:00
流花
流花
ありがと、千尋。
最期にどうしても会いたくてきちゃった…。
千尋
千尋
流花?
最期ってなんだよ!?
流花
流花
私は、もうここにはいられない。
警察に捕まったらパパにも…新しいママにも
迷惑かけちゃう…
だから、ここじゃない
どっか遠いとこで死んでくるよ
流花はいつものようにふわりと笑って見せた


僕の好きな笑顔。


流花が今からすることを否定もできない


かと言って、肯定もできない。



何が正しいか間違いなのか分からない






千尋
千尋
っ!それじゃ、僕も連れてって!
気づいたらそんなことを口にしていた。
流花
流花
千尋?
千尋
千尋
流花が死ぬなら、僕も一緒に逝く。
最期まで一緒だ。
一人にさせない。
だから連れてって?
流花
流花
いいの?
千尋
千尋
うん
流花
流花
今の幸せが私のせいで全部壊れるんだよ?
千尋
千尋
流花…。
僕は生まれてすぐ捨てられたんだ。
その時から僕の人生は壊れているんだ。
今更だよ…。
それに、流花と一緒に死ねるんだよ?
これ以上幸せなことってないと思わない?
流花
流花
ありがと…
千尋
千尋
じゃあ、準備するから待ってて
流花
流花
うん
これでいい。

大丈夫。



必死に自分に言い聞かせる





自分の部屋に行って支度をする



財布


ナイフ




……携帯ゲームはいるか?

でも、WiFiがあれば調べたりもできるか?


よし、持っていこう。







ふと、壁に画鋲で止めてある一枚の写真が
目に止まった



里親候補の写真だ。




前に一度会ったことがある。



とても優しそうな女の人と明るい男の人。


その時撮った一枚の写真。






もうこれも要らないな…


写真を手に取り両手で引き裂く。




あ、あれも要らないな


引き出しの奥底に隠してあったノート。


このノートにはいつも流花をいじめてくる

あいつがしてきたことを書いていた。




中身も見ないでページを破り

引き裂く





もうここに戻ってくることは無いだろう



せめて、いらないものは全部壊してから逝こう

千尋
千尋
ごめん。待った?
流花
流花
ううん。大丈夫。
千尋
千尋
それじゃあ、行こうか

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