流花はいつものようにふわりと笑って見せた
僕の好きな笑顔。
流花が今からすることを否定もできない
かと言って、肯定もできない。
何が正しいか間違いなのか分からない
気づいたらそんなことを口にしていた。
これでいい。
大丈夫。
必死に自分に言い聞かせる
自分の部屋に行って支度をする
財布
ナイフ
……携帯ゲームはいるか?
でも、WiFiがあれば調べたりもできるか?
よし、持っていこう。
ふと、壁に画鋲で止めてある一枚の写真が
目に止まった
里親候補の写真だ。
前に一度会ったことがある。
とても優しそうな女の人と明るい男の人。
その時撮った一枚の写真。
もうこれも要らないな…
写真を手に取り両手で引き裂く。
あ、あれも要らないな
引き出しの奥底に隠してあったノート。
このノートにはいつも流花をいじめてくる
あいつがしてきたことを書いていた。
中身も見ないでページを破り
引き裂く
もうここに戻ってくることは無いだろう
せめて、いらないものは全部壊してから逝こう
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。