第16話

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2023/03/11 11:24
いつも騒がしいはずの部屋は

ずーんと重たくて

その原因があかねが残した1枚の紙だと分かっていた。
(なまえ)
あなた
なに…これ…
恐る恐る遺書かみを開くと

そこにはあかねの字が並べてあった。
共にすごした思い出も、

出会った時の話も。

悪ふざけして会社に怒られそうになったことも。

それから私が大好気でいてくれた事も。



最後にあかねはこう書き残していた。

「あなた。あなたはいつも私がアイドルになるべき人間だって言ってくれてるけど、

私はそうは思わない。

あなたこそ本当にアイドルになって輝くべき人間なんだよ。

分からないところは分からないままにしない所とか、

挨拶しっかりするところとか。

見ていて気持ちが温まった。




私は先に行く逝くけど、あなたは自分の人生を全うして欲しい。

なんかね、最近凄い疲れちゃってたから、

案外気分転換に遠い所に行くと気分も晴れるの!


あなた。私達離れてどこで何をしても

親友だからね」




遺書を読み終わった数秒後、

私のスマホが鳴り出した。

宛先は会社から。

内容は言うまでもないよね。



あかねは15歳という若さだった。

死因は自殺。

原因は双極性障害。別名うつ病。

あの完璧主義な性格があかねを奪った。


あの時あかねを問い詰めなかった後悔よりも先に

もう二度と会えないことの方が心を打った。




涙すら出なかった。

感情が悲しいを超えてしばらく無の中を漂っていた。

色んな事を思い出して、

会話した内容も思い出して、

まだ実感が湧いていなかったのかも。


朝遺書を見てその場に崩れ落ちた私は

そこから1歩も動けなかった。

日が暮れて月が出てきてもなお、

1人そこに座り続けた。



そして私は決めた。

あかねが見れなかった景色を

私が必ず見せるって。

あかねが目指していたものを

私が叶えてあげるって。


これだけ聞くとまるで私があかねのクローンになったみたいだけど、

そうなのかもしれない。

私にとってあかねはSIXTEENを経て必ずデビューする人材だったから。






迎えた本番、

あかねなら全部門1位を取るだろうと思っていた私は、

全部門1位を取り続けた。

視聴率部門1位

ダンス部門1位

歌唱力部門1位

表現力部門1位



撮影は約半年続いた。

始まりがあれば終わりもある。

結果発表の最終回では無事にTWICEのメンバーとして選ばれた。
(なまえ)
あなた
………
嬉しかった。

嬉しかったけど、あかねとデビュー出来なかった事が何よりも悔しかった。

オンニ達は皆喜び泣いてるけど、

私は黙ってこの瞬間を身に染み込ませいた。

あかね。これが貴方が見るべき景色だったんだよ。

TWICEとして生きていく人材だったんだよ。

見えてる??スポットライトが私たちを照らしてる。



















(なまえ)
あなた
…だから止まってなんて居られないです。
(なまえ)
あなた
私は私だけの身じゃない。
(なまえ)
あなた
あかねと一緒だから、あかねの分までやり遂げたいんです。
(なまえ)
あなた
あかねが見るべきだった景色を見させたいんです。
jihyo
jihyo
……あなた
jeongyeon
jeongyeon
………
(なまえ)
あなた
…これが私が頑張れる理由です。
jeongyeon
jeongyeon
そうだったんだね…教えてくれてありがとうね
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
場の雰囲気を下げてしまいましたね…
(なまえ)
あなた
ごめんなさい。オンニ達ももう休んで…
jihyo
jihyo
ううん、あなた…オンニ達何も分かってなかった…
jihyo
jihyo
そんな大きい荷物を背負い込んでるとは思わなかった…ごめん…
(なまえ)
あなた
オンニは悪くないですよ…笑
jeongyeon
jeongyeon
頑張ったね…1人でしっかりここまで運んでこれて…
そういうジョンヨンオンニは私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

私はそれには逆らわなかった。

頑張ってなんかないよ。

あかねと歩めるなら本望だし……。
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
ねぇ…オンニ達?
jihyo
jihyo
うん?
jeongyeon
jeongyeon
どうしたの?
(なまえ)
あなた
私これからも立ち止まるつもりないから。
(なまえ)
あなた
だからもし走りすぎてると思ったら、また止めてくれる…?
jihyo
jihyo
もちろんよ
jihyo
jihyo
あなたが目指す場所に私達も着いていくから
jeongyeon
jeongyeon
そうよ?オンニ達は肩が広いからいつでも頼ってね?
(なまえ)
あなた
うん、オンニ達ありがとう
オンニ達は私にとって家族と同然の人。

まだオンニ達に素直に頼れるのは先の話かもしれないけど、

そう言ってくれる事が何よりも心の拠り所になる。
jeongyeon
jeongyeon
じゃあもう今日は休んで?
jeongyeon
jeongyeon
熱下げて明日onceに会おうね?
(なまえ)
あなた
(コクコク)
私は自分にかかっている毛布をかけ直して

オンニ達に見守られながら目を瞑った。



本当はあかねの話はあんまりしたくなかった。

でもオンニ達に話せたことで

少し気が楽になった気がする。

あかねの存在をオンニ達に任せた訳なんかじゃない。

知って貰えたから気が楽になった。

だって本当ならあかねもオンニ達と明日のコンサートに立ってる人だったんだよ?

そんな逸材の存在を出せたなんて

親友の私からすれば嬉しいに決まってる。

あかねの凄さを知って貰えた事が

私が2人に話せてよかったなって思えた所。

















Jeongyeon side

練習生の時から思っていた。

あなたの努力に努力を重ねる姿がいつも危なっかしくて儚いって。

だからいつも聞きたかった。

「何があなたをそんなに掻き立てるのか」って。



普通に考えておかしい話だと思う。

オーディションを受けている時のあなたは

まだその年で15になる女の子で、

オーディションが始まる約2年前に韓国に一人で来て、

不安なことも沢山あっただろうに、

その不安を忘れら差せられるほど

自分を表現している時の眼差しは誰よりも鋭くて力強い。




あなたは何もかも完璧な女の子だと思っていた。

オーディションのステージに立っている時は

ミスなんて絶対にしないし、

練習する日には同じグループになったメンバーを支えながら高めあってる。

弱音なんて吐かないし、

いつもチームが笑顔になる言葉を好んで使っていた。



オーディションの時、私も1度あなたと同じグループになったことがあったけど、

到底最年少だとは思えなかった。

みんなを引っ張りあげる力と、

相手の良いところを伸ばす力。

その素質はPDさんですら褒めていた。


でも本当はその行動全てが

あなたがあかねちゃんを自分と重ね合わせていたものだったなんて知らずに

ただただ凄いと驚嘆していた自分を叱りたい。



あと一つだけ。

もう一つだけ特に印象に残っていたのは、

必ず寝る前に窓の近くで夜空に向かって手を合わせていたこと。

初めは日本にいる家族に思いが届くようにしていたのかと思っていた。

だからなんでそうしていたのかずっと気になってた。


その相手がもうこの世にはいないだなんてことも思っていなかった。








あなたが熱でフラフラしているから

早く休ませないといけないのは知ってる。

でも聞いてしまった。

「なんで?」って。



オンニ知ってるから。

オンニが聞いたその「話」が本当は話したくない内容だってこと。

それから毛布をその細くて白い手綺麗な手でぎゅって掴んでるのも。

視線がうろちょろしてて上の空なのも。

こんな時に聞くべきじゃないのは分かってる。

でもごめんね。

それでも知りたいの。

オンニは可愛いマンネに全部一人で背負って欲しくないの。








話し始めたあなたは

「あかねちゃん」と言う女の子の名前を出していた。

出会った頃の話とか、

宿舎での話とか。



初めの方の話をしている時は楽しそうだったのに

話が終盤にかけてあなたは無意識なんだろうけど

目をうるうるさせて

次第に毛布を握る力も強くなってて。

そんなあなたを見て

思わずジヒョと目を合わせた。





「あかねちゃん」


私たちがSIXTEENの撮影を始めた時、

PDさんから1人辞退したとは聞いていたけど

あかねちゃんがその子だとは思ってもいなかった。


お隣の国とは言え外国に13で一人で来て、

ついに出来た頼れる日本の女の子が、

重圧に耐えきれなくなってふっと居なくなる。

そんな出来事をずっと誰にも話さず一人で抱え込んでいたなんて。

心が痛むって言う言葉すら浅はかだよね。





全部を話してくれたあなたはどこか表情がや柔らかくなった気がした。

誇らしげそうな顔つきというか。



私のせいであなたの休む時間を奪ってしまっていた。

だから今度こそ休ませないと行けない。



眠りにつこうとしているあなたに風邪薬を飲ませて

冷えピタを貼った。


毛布を被り直しておやすみと言うあなたに

私とジヒョはお休みと返す。

楽屋に運ばれてきた時の強ばった表情は消えて、

今は穏やかに眠りにつこうとしている。

それを見れて私も安堵した。


最近のあなたは立ちくらみしたり、体調崩したり、

危なっかしい事が多かったから、

自分の目で休めてること見れて安心した。


大丈夫。今度からはオンニ達も一緒に背負うから。

今は明日来てくれるonceのことを想像して。

オンニ達がずっとそばにいるから。
































※ネタバレ含みます

こんばんは!しじみです!

次回LIVE編を書こうとしています。

そこでなんですけどもっと楽しんでもらいたいので

小説を読みながら指定した曲を直接流して頂くといいかなと思います。

例えば文章中にfeel specialのシーンがあったとしたら、

他デバイスや、音楽アプリでfeel specialを流しながら文字を追って貰うような形です。

試行錯誤しながら書きますのでお楽しみに!











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