夜になり、校庭の真ん中に、
大きなキャンプファイヤーが焚かれた。
誰もいない教室。
よく見ると無一郎の目に
キャンプファイヤーの炎が映ってる。
無一郎が、そっと手をつないで
指をからめてきた。
返事ができなかった。
代わりに
無一郎の目を見つめ返した。
つながれた無一郎の手が、
みるみる冷たくなるのが
伝わってきた。
無一郎がわたしを机に押したおして
くちびるをふさいだ。
ガラッ
教室のドアが開いた。
わたしたちの間を沈黙が支配した。
それを打ち破るように、
ワアアア…!!
校庭から、生徒たちの大歓声が
響き渡ってきた。
文化祭、総合順位の発表だ。
文化祭実行委員長の発表に
会場のボルテージは最高潮だ。
キャアアアー!!!
つんざくような悲鳴が、渦を巻いている。
野外ステージに、爆殺隊が
飛び上がったのが見えた。
嵐のような歓声だ。
ほんと…人気なんだな。
逃げるように、教室をあとにした。
後味の悪い、文化祭の幕切れだった。
明日は…とりあえず日曜日。
少し休みたい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。