時透くんの部屋に入った。
家には…二人きり。
でも時透くんはまだ、
ムッとしているみたい…。
部屋には本がたくさんあった。
『三国志』に『剣客商売』
マンガもあった。
『るろうに剣心』だ。
カチャ
それからなんだか本を読む流れになり、
もー、1時間が経つ。
何にもしないのかな…!?
わたし…なに期待してんだろう。
バサッ
時透くんが、本を投げ捨て、
こっちにつめ寄ってくる。
挑発…。
時透くんに挑発されてる…。
今わたしたちは、
ギリギリに引きしぼられた
感情の微妙なバランスの上にいる…。
いや違う、先に挑発したのはわたしだ。
時透くんは、熱っぽい目で
わたしの頭と腰に手をまわすと
グイッと力強く引き寄せた。
…と同時に、時透くんの
柔らかいくちびるが押しつけられた。
目をつぶるヒマもなかった。
急に距離が縮まって思考できない。
時透くんの荒い息づかいが伝わってくる。
それは、時透くんと一度だけしたキスとは
すべてが違っていた。
心がどっかに飛んでしまいそう。
強く時透くんの存在を感じる…。
わたしの脳は、ショートしてしまった。
そして、
こうやって積み重ねていくのかな…。
時透くんにまたちょっと近づいた。
恋が重さを増してゆく…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!