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ガタンガタン……
旅行へは電車で乗り換えを何回も
しなくちゃいけないらしい
手には京都と奈良の旅行ガイドブック
それを持っているころちゃんが言う。
いや、可愛いかよ……!!!
チラッ
……誰も見てないな……
……よし
僕はあなたの頬の上にキスを落とした
あなたの眠りが浅いことに気づいたにもかかわらず
負担がかからないように
あなたの肩に寄りかかる
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パシャパシャ
なんて他愛もない会話をしながら俺たちは
電車に揺られていた。
どうやらさとみくんが言うには
乗り換えの時、誰が私を運ぶかを争ってたそう。
なんか……悪い
るぅとくんのその言葉に
私の顔が熱を帯びていくのを感じる
旅行……
最後に行ったのは小学2年生の時だったな……
あんな事がなかったら
今も家族みんなで行けてたのかも知れないのに……
まあ……
今悔やんだって仕方のない事なんだけど
私は空に目を向けた
『お父さん……お母さん』
隣にいる……?
私は名前を呼ばれ振り向いた
涙が見えないように
満点の笑顔で
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!