『……あなた』
誰かの優しい声……
あなたは誰……?
今思えばあれは初恋だった。
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あなたは親が死んでから
俺のところに住むようになった
俺の親は海外に行ってたから
折角だし……とあなたを誘った
本当は興味本位で火事場に入って……って
今考えたらほんとにバカなことしたけど
あの時入ってよかったと思ってる
だってあなたを助けられたんやし。
親には散々怒られたけど
"よく助けたな"って最後には褒めてくれとったな
衝撃だった。
あんなに楽しい毎日がもうなくなると思うと
寂しくて
散々泣いた後
俺らは何度も抱きしめ合った
どこかで会えるかもしれないのにって
あなたは言ってたけど
そんな確率は少なすぎて……
次の日、彼女は出ていった
でも俺はまだお別れしたくなくて
駅までついて行った
プルルルルルルルル……
あなたに渡されたもの。
それは
ミサンガ
ちぎれたら願いが叶うっていう噂のアクセサリーだ
プシュー……
ドアが閉まると彼女はガラス越しで言った
"ありがとう"
そう言うと彼女は笑った
涙でぐしゃぐしゃな笑顔だったけど
とても美しかった
そして俺はそこで恋だったと気づいた
もう手遅れだったけど
そのまま俺らは大きくなっていった
すとぷりのみんなにも出会った
そしてミサンガは毎日お守りのように付けた
中学生になってあなたに会った時は
本当に驚いたと同時に
嬉しさが込み上げていた
彼女は俺のことを覚えていなかった
ほんまは泣きそうやったけど
なんとか堪えて
あなたに"2度目"の自己紹介をした。
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ちゅ……
相変わらずやな
あなたは。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!