みんなにはまだ言ってないことがある
実は私は
高所恐怖症なのだ
思い出した
あなたは高所恐怖症なんやった
小6の修学旅行の時
スカイツリーに行ったら
なんか気分悪くなってたし……
グイッ
ーーーーーー
ほんとにジェルくんは優しい。
いつも周りを見てくれてて
私のことまで気遣ってくれる
それに比べて私は……
みんなの役に立ててるのかな…………
ピタッ
冷たい何かが頬に当たる
隣にはジェルくんが私を笑いながら見つめていた
まただ……
その暖かい言葉が私の胸を締め付ける
ーーーーーーーー
そう言われた言葉に胸が熱くなる
ここに居ていいんだなぁって思わせてくれる
……推しと連絡先交換なんて……
夢にも思ってなかっただろうな……
ザア……
ってか……みんな速くない!?
私が遅いだけか……
みんな……どこ……?
いつの間にか私はみんなとはぐれていた
周りには誰もいなくて
聞こえるのは激しい雨の音だけ。
たくさん探し回って
今自分がどこにいるかなんて分からない
足ももうそろそろ限界が近い。
とりあえず私は近くにあった公園で
雨宿りをすることになった
ほんとに夏なのかという疑問を持つほど気温が低い
私は……この雨が止むのを待つしかなかった
ここがどこか分かんないし、充電無いし……って
もう最悪…………
パサッ
見上げるとそこにいたのは
さとみくんだった
その言葉とは逆に優しく強く抱きしめられる
いつもとは違う苦しそうな声でさとみくんは言う
そう何度も抱きしめられ
私は力が抜けたようにさとみくんに身を委ねる
違う。こんなことを言いたかったんじゃない。
本当は……ほんとは……
"私を見つけてくれてありがとう"
"本当に嬉しかった"って
伝えたかったのに……
そうやって私たちは
いつの間にか上がっていた雨の跡を
そっとなぞるように
あなたと一緒に
歩き出しました
みんなのもとへと
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。