第4話

第 3 話
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2023/08/23 05:58


ありがとうございましたー


近くのコンビニでお昼を買い、ビニール袋を片手にぶら下げる。


他に寄るところもなく、真っ直ぐ家へと向かう。







ちょっと大ちゃ…青峰くん!待ってってば!


家に帰る途中、走ってくる音と誰かを呼ぶ声が聞こえてきた。



……聞き覚えのある声。



桃井 さつき
部活今日からでしょ?練習行くよ
青峰 大輝
必要ねぇよ、そんなもん。行きたきゃ1人で行け。
桃井 さつき
ちょっと…っ!


気づけば声は私のすぐ後ろまで近づいてきていて、


……いつの間にか、私の足は止まっていて。



桃井 さつき
あっ、すみませ………


それに気がつかなかった彼女が、軽く私とぶつかった



白波 あなた
いえ、大丈夫です
白波 あなた
こちらこそすみませ──
桃井 さつき
あなたちゃん……?
白波 あなた
っ…!


気づかれないうちに早く離れてしまおうと思ったけれど、


私の名前を呼ばれ、思わず顔を上げてしまった



桃井 さつき
やっぱあなたちゃん、だよね…?
白波 あなた
人違い、じゃないですか…
桃井 さつき
そんなことないよ!
桃井 さつき
だってあなたちゃんも家この辺でしょ?
白波 あなた
・・・


確信を持たれてしまっているようで、誤魔化すことがもう出来ない。


彼女の隣に立つ、青峰くんの視線が痛い。



青峰 大輝
さつき、こんなやつどうでも良いだろ
青峰 大輝
さっさと帰るぞ
桃井 さつき
こんな奴って…っ、そんな言い方ないでしょ!?
青峰 大輝
だって事実だろ
青峰 大輝
…コイツはただの臆病者だ
青峰 大輝
俺との勝負を投げ出した雑魚に興味はねぇ
桃井 さつき
青峰くん!
白波 あなた
……っ



“ 俺に勝てるのは、俺だけだ 。 ”



____けどまぁ、お前なら俺に勝てるかもな 。





白波 あなた
・・・


彼の、ある日の言葉を思い出した。


練習すればするだけ上手くなって、彼に勝てる人はだんだんと少なくなっていって。


勝負自体を投げ出す人もそう少なくなくて。


……それでも私は、彼に勝てるほどの実力がほしくて。


彼ら全員に勝てるほどの実力が必要で。


……結局、それも全て無意味だったけど。



それでも、嬉しかったんだ。


バスケを楽しそうにやらない青峰くんが、私とバスケをする時は少し楽しそうにしていて。


もしかしたら、彼にいつか追いつけるんじゃないかって。あの時はそんなポジティブな思考ばかりだった。



だけど………



白波 あなた
私じゃあ青峰くんに勝てないもん
白波 あなた
…勝っても、意味ないし


だけど今となっては。


そんな日々は、ただのガラクタでしかない。


青峰 大輝
チッ、腹立つ
桃井 さつき
あっ、待って青峰くん!


『あなたちゃんまたね!』と慌てたように私に手を振り、そのまま青峰くんを追いかけていった。


……私ひとり、その場所に立ち止まる。



白波 あなた
馬鹿みたい…


楽しくないのにバスケ続けてる彼も。


勝ちたいと思っていたあの頃の私も。


本気でバスケに打ち込んでいる全員が。


馬鹿馬鹿しい。



……なんて。


そんなことばかり考えて、いつまでも立ち止まっている私が。


暗闇に取り残されて、みっともなくあの日々を否定して自分を保とうとしている私が。


何よりも、誰よりも。ばかばかしい。



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