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第10話

第 9 話
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2023/09/14 12:52

放課後。


誰も居ない図書室。図書委員としてカウンターに座り、本を読む。



部活に入っていない私は放課後に仕事を任されることが多い。



テスト期間でもない限り、この時間に図書室を利用する人は少ない。



座って本を読んでいるだけで良いのだから気が楽。




あれ、君って確か…



珍しく誰か来たようで顔を上げると、そこには見覚えのある人が立っていた。



白波 あなた
あ、昨日の…
白波 あなた
伊月、さん……でしたっけ
伊月 俊
お、覚えてくれてたんだ



本を返しに来たのであろうその人は、昨日体育館に水筒を取りに行った時に助けてくれた人だった。



白波 あなた
昨日はありがとうございました
伊月 俊
そんなかしこまらなくて良いよ、気にしないで



優しい雰囲気の彼に、自然と心が落ち着く。


居心地が良い。



伊月 俊
そういえば、名前聞いてない気がする



返却用のバーコードを読み取っていると、ふと思い出したようにそう言った



白波 あなた
…白波あなたです



答えない訳にも行かず、1度手を止めて名前を言った。



伊月 俊
白波…あなた……
白波 あなた
…?、どうかしました?
伊月 俊
あーいや。なんか聞いたことある気がして…
伊月 俊
多分気の所為だから、気にしないで
白波 あなた
……そうですか



そう言えば。この人はバスケ部なんだっけ。


だとしたら聞いたことあってもおかしくない気はする。


わざわざそれを言う必要もないから黙っておく。



白波 あなた
あとは私が戻して置くので大丈夫です
伊月 俊
お願いします


返却された本を後ろにある棚に一旦置いた。



……それにしてもこの本。



白波 あなた
(…ダジャレ大百科?)



なんだかこの人が読んでいるイメージが湧かないような本。それよりこれがうちの図書室にあったことも驚きいた。



伊月 俊
それじゃ、またね白波さん
伊月 俊
委員会頑張って
白波 あなた
あ、はい。……ありがとうございます


この後部活があるからか、急ぎ足で図書室から出ていった。



……またね、って。



廊下とかですれ違ったとしても、話すことはもうないだろうに。



次を約束されたような言葉に。少し、心が揺らいだ。




彼が出ていって静かになった図書室。


返却された本を棚に戻す前に、ダジャレ大百科の中身が何となく気になって適当なページを開いた。




白波 あなた
( 昨日スマホに新しい機能が追加された )
白波 あなた
( ダジャレ聞いて笑ったのは誰じゃ )
白波 あなた
……なにこれ


中身は空っぽで、内容なんてまるでなくて。何とも馬鹿らしい。



……だけど、どうしてか。気づけば口角が上がっていた。




考えたくないこと。考えないといけないこと。


一日中ぐるぐると頭の中で回るもの。


ただの気休めでしかないとしても。この一瞬だけ。一日中頭の中を支配していたものは消えていた。




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