第10話

言えない*奈都side
582
2019/01/30 10:20
「奈都は樹世のこと、どー思ってる?」


來々にそう聞かれて、ドキッとした。


去年同じことを聞かれた時、私は幼なじみと答えた。


樹世のこと好きだったけど、言えなかった。


そして今回も、ホントのことが言えずに幼なじみと答えた。


そして…


「ねぇ奈都。」


今度はなんだ…?と身構えていた時、次に來々の口から出た言葉は予想していたよりも重大なことだった。


「私、樹世に告白しようと思う」


「…告…白…?」


來々が?


樹世に…?


ドクン、ドクン。


ズシッと心に重たい鉛が落ちてきたみたい。


來々が樹世を好きなのは昔から知ってた。


今までも冗談交じりに好きとは伝えてたけど…


今度は本気で告白するの…?


「奈都、どう思う?」


「どう、思うって…」


來々は可愛いし女の子っぽいし…


なんなら樹世といい感じだし…


成功しちゃう、と思う…


だけど…


「どうだろうね…

樹世って、恋愛とか興味あるのかな?」


自分の気持ちを悟られないように目を逸らして言う。


來々と樹世が付き合ったら…


私は…


「ん〜そこなんだよねぇ…

好きな人いるのかもわかんないし…」


そうだよ…


好きな人いないのに…告白されたって…


私だったら出来ない…


「でもさぁでもさぁ、もしいなかったらチャンスだよね?

告白すれば、少しは私のこと、意識してくれるかもしれないし…」


「っ…」


前向きに話す來々に劣等感を覚える。


「そ、うだね…」


來々…本気なんだ…


來々は昔から素直で、好きなものは好きと言える。


だから私にも樹世が好きだと打ち明けてくれた。


でも私は…ずっと言えないまま。


中学生の頃にこの恋心に気づき始めて、何回も言う機会はあったのに。


言い出せなかったのは、自信が無かったから。


來々の方が絶対かわいい。


來々の方が女の子らしい。


來々と私が同時に告白したら來々を選ぶに決まってる。


そんな來々と好きな人が被ってるなんて…


言えない…


絶対言えないよ…

プリ小説オーディオドラマ