「奈都は樹世のこと、どー思ってる?」
來々にそう聞かれて、ドキッとした。
去年同じことを聞かれた時、私は幼なじみと答えた。
樹世のこと好きだったけど、言えなかった。
そして今回も、ホントのことが言えずに幼なじみと答えた。
そして…
「ねぇ奈都。」
今度はなんだ…?と身構えていた時、次に來々の口から出た言葉は予想していたよりも重大なことだった。
「私、樹世に告白しようと思う」
「…告…白…?」
來々が?
樹世に…?
ドクン、ドクン。
ズシッと心に重たい鉛が落ちてきたみたい。
來々が樹世を好きなのは昔から知ってた。
今までも冗談交じりに好きとは伝えてたけど…
今度は本気で告白するの…?
「奈都、どう思う?」
「どう、思うって…」
來々は可愛いし女の子っぽいし…
なんなら樹世といい感じだし…
成功しちゃう、と思う…
だけど…
「どうだろうね…
樹世って、恋愛とか興味あるのかな?」
自分の気持ちを悟られないように目を逸らして言う。
來々と樹世が付き合ったら…
私は…
「ん〜そこなんだよねぇ…
好きな人いるのかもわかんないし…」
そうだよ…
好きな人いないのに…告白されたって…
私だったら出来ない…
「でもさぁでもさぁ、もしいなかったらチャンスだよね?
告白すれば、少しは私のこと、意識してくれるかもしれないし…」
「っ…」
前向きに話す來々に劣等感を覚える。
「そ、うだね…」
來々…本気なんだ…
來々は昔から素直で、好きなものは好きと言える。
だから私にも樹世が好きだと打ち明けてくれた。
でも私は…ずっと言えないまま。
中学生の頃にこの恋心に気づき始めて、何回も言う機会はあったのに。
言い出せなかったのは、自信が無かったから。
來々の方が絶対かわいい。
來々の方が女の子らしい。
來々と私が同時に告白したら來々を選ぶに決まってる。
そんな來々と好きな人が被ってるなんて…
言えない…
絶対言えないよ…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。