スライド式のドアを開けて中に入ると、奥行が結構あり、思っていたよりも広く感じた。
店内は洋楽が流れていて明るく、でも落ち着いた雰囲気。
こちらへどうぞ、と案内されテーブルに着く。
「スイーツフェア…
へぇ…見て見て」
奈都がメニューの一番後ろのページを見せながら言う。
「ここのスイーツ5個選んで1000円、ドリンク付きだって〜!
安くない!?」
「え、安いね〜
だって普通飲み物で500円位するよ?」
載っているケーキの種類も20種類位はあって、選ぶのが大変…
どうにか2人で絞って注文。
10種類を半分づつ食べることにした。
「これ4人で来れば全種類食べられたね」
「今度はほのちゃんと美波ちゃんも誘おっか〜」
そうだね、とまだメニューに目を向けたまま答える奈都。
その奈都に、どうやって話を切り出そうか悩む…
「あ、あのさっ…」
私が言いかけたとき、ウェイトレスさんが飲み物を持ってきた。
…タイミングがぁ〜…
「わ!綺麗!」
奈都が注文したのは太陽のサイダー、私は夜空。
星屑がキラキラ光ってかわいい〜…
「來々、写真写真!
インスタに載せなきゃ!!」
カシャ、カシャと角度を変えて次々に撮っていく奈都。
毎回毎回思うんだけど…
「奈都、何枚撮るの…?」
ケーキも運ばれてきちゃったよ…
「えっ?
んん〜、満足のいく写真が撮れないんだよね…」
うう〜…私は早く飲みたいんだけど…
「奈都、貸して?」
スマホを受け取って、1枚。
「どーおっ?」
「え、やば!
來々うま〜!!
なに!?センス!?センスの違い!?」
んふふ〜っ
昔からこーゆーのは得意なんだよね…
「ありがと!來々!」
「いいえ〜」
やっと食べれる〜
「んで?」
ケーキを口に運びながら奈都が言う。
「へ?」
「だからっ、さっき何か言いかけたじゃん。」
あ、そうだった。
本来の目的、忘れちゃってた…
「あ、あのさっ…」
妙に緊張。
「奈都は…」
ごくん、と息を呑む。
「樹世のこと、どー思ってる…?」
「…え…?」
あっけに取られて顔を強ばらせる奈都。
「どう…って…前にも言ったけど…幼なじみ…だよ…?」
…。
奈都…
うそ、奈都が樹世を見つめる時、私と同じ目してる。
どうして、私に隠すの?
私が樹世を好きって知ってるから?
遠慮してるの?
前聞いた時も、違和感があった。
きっとあのときも、奈都は私に隠してた。
もう、2回目だよ?
私はあまり怒らない方だけど、この時は少しムカッとした。
「ねぇ、奈都。」
そっちがその気なら、私はハッキリ言うよ。
「私、樹世に告白しようと思う。」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。