“好きです”
え…?
もう一度、確かめるように手紙に書いてある文字を追う。
「す、き…です…?」
え…?
「奈都、好きだよ。」
ぱっと手紙から樹世の顔に視線を移す。
樹世が、私を…?
じわじわ目が熱くなっていくのを感じた。
「わ、私で…いいの…?」
視界がぼやけて樹世の表情が見えなくなったけど、こくんと頷いたのは分かった。
「な、んでっ…」
なんで私なの…
「私、可愛げ無いし、意地っ張りだし…」
思いもよらない告白。
私なんて、嫌なとこだらけなのにっ。
「すぐ怒ってさっきみたいに言い合いになっちゃうし…バカだし…っ」
溢れてくる涙を服の袖で拭いていると、樹世が急に立ち上がった。
気づけば目の前に…
コツンとおでこがぶつかる。
ち、近っ…!!
「あのさぁ、オレの好きなヤツ、否定するのやめてくれる?」
目元に焦点が合わない。
樹世は、にっと口角を上げた。
「それ以上言うなら、口塞ぐよ?」
「っ!?」
意地悪そうな顔。
かぁぁっと急に頬が熱くなった。
それって…!?
私がフリーズしてることに気づいたのか、樹世は体を離して私のベッドの上に座った。
「奈都は奈都のいいとこがあんじゃん。
明るいし、人の気持ち考えられるし。」
そ、んな…
急に褒められると恥ずかしい…
「それに、強がりで意地っ張り。」
ん…?
「それはいいとこじゃなくない…?」
「え?そう?
オレは好きだけど、そういうとこ。」
「っ!」
もー、なんで“好き”とかサラッと言うかなぁ〜!
ニヤニヤ笑ってる樹世。
んーもう!!!
「絶対からかってるでしょ!!!」
「バレた?」
「もーっ!!!」
ははっと樹世が笑う。
あぁ。
やっぱり…。
やっぱり私、この笑顔好きだ。
こうやって言い合ってても、楽しいって感じてる自分がいるんだ。
「樹世?」
「んー?」
どうしても口元が緩んでしまう。
ニヤニヤしちゃってるかも。
でも…
ちゃんと伝えるよ。
「樹世、好きだよっ!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。