ブーッと振動するスマホ。
夜、宿題をしている手を止め、目を移す。
…?
電話?
…じゅ、樹世からだ…。
「もしもし…?」
さっきカフェで來々とあんな話したばっかりだから変に緊張しちゃう。
「おー、奈都ー。
なぁ、数学の宿題やった?」
「あー…さっきやってたけど…
って、勉強の相談なら私じゃなくて來々にすればいいのに。」
來々の方が頭いいんだし…。
とは言いつつ、私に電話をくれたことに胸が高鳴る。
「あー、さっき電話したんだけど出なかった。
風呂とかかな?」
「…。」
デスヨネー。
私に相談しといて來々にしてないとか、ありえないよねー。
少しでも舞い上がった自分が恥ずかしい。
「んで、あのプリントさぁ、答えおかしくね?」
「ほぉ…」
スマホを耳と肩で挟んでガサガサとカバンの中からファイルを出してプリントを探す。
「えーどの問題?」
「四角…2の、カッコ3」
四角2のカッコ3…
げ。
「あー、私やってないわ〜」
もうカッコ2の時点でお手上げです。
「…だよなぁ、奈都に電話したオレがアホだったわ〜!」
「うっざー!」
分かってんならわざわざかけてくんなっ
「樹世嫌い!」
ブチっ。
あ、思わず…
ツーッツーッと通話終了の音が流れる。
はぁ…
どうして私ってこんな感情的になっちゃうんだろ。
ウザイとか嫌いとか、すぐに言っちゃう。
考えれば考えるほど、状況は來々が優勢で。
私のいいとこなんてひとつも見つからない。
あーぁ、來々に生まれたかったなぁ〜…
って、ダメダメ!!
人がどうこうじゃなくて、私が変わらなきゃ。
樹世のこと、どうしたって諦められない。
たとえ樹世と來々が付き合ったとしても、私はこの気持ちを伝えたい。
來々は頑張って告白する。
その勇気、私には無かった。
でも…
私も頑張らなきゃ。
ちゃんと告らなきゃ。
そして、來々にも…
ちゃんと伝えなきゃ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!