第20話

意識して*奈都side
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2019/02/04 06:56
「そーいや、あんまりオレら2人で帰ることって無かったよな〜」


帰り道の途中、樹世は手を頭の後ろに組みながら呑気に言った。


「確かに…」


もしかして、初?


部活の休み合わないし、テストのときとかは3人でだったからなぁ…


「テスト、どーだった?」


「あー…うん、死んだよね…」


空白だらけで…


どうしよう、赤点かもなぁ…


「だーから、前にオレん家で勉強しようっつったのにー」


「だーってー…」


絶対集中出来ないもん。


來々も行くの?って聞いたら来ないって…


2人きりは絶対に無理!


「だって?」


う。


こんな理由本人に言えるわけない。


「なんでもない!」


ふいっと顔を逸らす。


「なんだよー…

教えろよ!」


言いながら肩を組んできた樹世の手を払う。


「無理!

しつこい!」


いきなりやめてよ!


心臓に悪いなぁ…!


「うーわ、傷ついたー

あーぁ、誕生日プレゼントあげようと思ってたんだけどなぁー

やめよーかなーぁ」


「な…!」


ウッザ!、と言おうとして声に詰まった。


私…いつもここで素直になれないからいけないんじゃない…?


きっと來々なら…


ぎゅ、と樹世の制服の裾を掴んで立ち止まる。


「ぉん?」


「…やだ、欲しい…。」


少し、自分でも可愛く。


あざとく…?


そーっと樹世を見上げると、樹世の顔がだんだん赤くなっていった。


「っ…

な、なんだよ急に…。」


そう言って驚いて、それから黙った。


樹世は空を見上げ、沈黙が続く。


…な、え?


それ、だけ…?


掴んだ裾、どーすればいいの…?


なんか今更、すっごく恥ずかしくなってきたんだけど…!?


どうしよう…


そう思って俯く私。


「しゃぁないなぁ、やるよ、誕プレ。」


「えっ、ほんとー!?」


顔を上げると、すぐそこに樹世の顔。


「「!」」


ばっと体を離す。


ドキドキ…


やばい、顔熱い…


好きってバレないか心配…


「おー、つか、奈都がいつもみたいに言い返してこないとなんか違和感。」


頭をガシガシと掻きながら樹世は歩き出した。


だよねー、私も思う。


でも私、樹世に好かれたいんだよ。


女の子として見てもらいたいんだよ。


恋愛対象にしてほしいの。


意識して?

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