「あー、おなかいっぱいっ」
「食べすぎちゃったねっ」
「でもまたやりたい〜!」
タコパは材料が尽きてお開きに。
スマホを見ると3時になるところだ。
美波の家から駅まで、電車組は一緒に。
私の家と美波の家、実は1駅離れてるんだよね。
「今度はもっと長くやってたいね!」
「ホットケーキミックスとかで中にはチョコ入れたり!」
「あーいいね!
あとは〜…
あ、ロシアンたこ焼きみたいにしてさ、わさび入れたり!?」
駅に着くまで会話は尽きない。
あー、ほんとに楽しかった!
「じゃあ、私こっちホームだから」
「うんっ、ばいばーい!」
みんなそれぞれのホームへ。
電光掲示板を見上げ、時計を確認すると次の電車まで少し時間が。
ベンチにでも座って待つか…。
何とはなしにスマホをポケットから出し電源ボタンを押すと、新着1件と表示された。
んー?
あ、りっちゃんからだ。
駒井律、中学の頃から仲がいいクラスメート。
珍しいな、りっちゃからLINEなんて。
「っ…」
タップして開いたトーク画面に私は目を見開いた。
『樹世くんと來々ちゃんって付き合ってるの?』
樹世と…來々…?
急に、どうしたんだろう…
なんでそう思ったんだろう…
『なんで?』
とりあえずそう送信してみる。
ドクンッドクンッ、と心臓が嫌な音を立てる。
付き合ってる…?
2人が?
ドクン、ドクン。
いつから…
そんなっ…
画面をそのままに放心していると、いつの間にか既読が付いていた。
『今日、デートしてたのかなって思って』
…で、デート…?
画面を見ていると、次々にメッセージが送られてくる。
『さっき、3時半くらいに2人スタバから出てくるとこ見かけて、』
『声かけようかとも思ったんだけど、なんか2人で取材みたいなの受けてたからやめちゃったんだけど』
『カメラ持ってる人が雑誌見せてたっぽいから、多分街中カップル的なやつかな〜みたいな』
え…
なに、それ…
スタバっていったら私たちの家の最寄りから3つ隣まで行かなきゃないじゃん。
2人だけで…?
しかも男女で…?
それって、やっぱり…
ぽた、ぽた、とスマホの画面に雫が落ちた。
付き合ってたの…?
いつから…?
私に隠してたの…?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。