「どう思う?」
樹世に告白しようと思うと告げたとき奈都は明らかに動揺してた。
「どう…って…」
奈都、これでも打ち明けない…?
やっぱり私には言ってくれないの…?
「どうだろうね…
樹世って、恋愛とか興味あるのかな?」
あ、目逸らした。
本当は、私に告白なんてして欲しくないんだろうな…
でも私だって、上手くいく保証はないんだよ?
「そこなんだよね…
好きな人いるのかも分かんないし…」
告白って、すごい勇気のいることなんだよ。
両想いって分かってるなら少しは楽かもしれないけど、相手が誰を想ってるか分からないのに『好き』って伝えるのは、すごく怖いんだよ。
内心、自信なんてないし今から緊張してるしすごく不安だけど、奈都の前ではポジティブに振る舞う。
「でもさぁでもさぁ、もしいなかったらチャンスだよね?
告白すれば、少しは私のこと、意識してくれるかもしれないし…」
告白して、振られない確率なんてどれくらいなのかな?
告白した後に私のこと好きになってくれることなんて、ほんとにあるのかな?
奈都は独り言のように、そうだね、と呟いた。
…言い過ぎたかな…?
私がポジティブになればなるほど、きっと奈都はネガティブになる。
奈都、私に打ち明けてよ。
奈都の心の中、さらけ出してよ…。
忘れた英語のノートを取りに、奈都は学校へ戻った。
私はそのまま家に帰った。
「ただいまー…」
って、言ってもなぁ…
私の家は母子家庭で、お母さんは私のために忙しく働いてくれてる。
朝早く出ていって夜遅くに帰ってくる。
だから私は一人暮らししている感覚。
たまに、ほんとにたまに、日曜日は一日おやすみだったりするけど、年に指折り数えるほど。
だからちっちゃい頃は奈都と樹世の家に遊びに行ったり2人が来てくれたりしてたなぁ〜…
誰もいない玄関でひとり思い出してくすっと笑う。
あの頃は、なんにも考えてなくて楽しかったな。
今は…
部屋に駆け上がり、ベッドに倒れ込む。
暗くて寒い冬の部屋は、私の心の中みたい。
ごめんね奈都。
試すような真似して。
樹世のこと好きなくせに、隠すから…
少し意地悪しちゃった。
それなのに奈都は私のことばっか応援して…
私、嫌な人…
「ごめんね…」
涙まじりに呟いたその言葉は暗い部屋に消えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!