第12話

ごめんね*來々side
579
2019/01/31 10:47
「どう思う?」


樹世に告白しようと思うと告げたとき奈都は明らかに動揺してた。


「どう…って…」


奈都、これでも打ち明けない…?


やっぱり私には言ってくれないの…?


「どうだろうね…

樹世って、恋愛とか興味あるのかな?」


あ、目逸らした。


本当は、私に告白なんてして欲しくないんだろうな…


でも私だって、上手くいく保証はないんだよ?


「そこなんだよね…

好きな人いるのかも分かんないし…」


告白って、すごい勇気のいることなんだよ。


両想いって分かってるなら少しは楽かもしれないけど、相手が誰を想ってるか分からないのに『好き』って伝えるのは、すごく怖いんだよ。


内心、自信なんてないし今から緊張してるしすごく不安だけど、奈都の前ではポジティブに振る舞う。


「でもさぁでもさぁ、もしいなかったらチャンスだよね?

告白すれば、少しは私のこと、意識してくれるかもしれないし…」


告白して、振られない確率なんてどれくらいなのかな?


告白した後に私のこと好きになってくれることなんて、ほんとにあるのかな?


奈都は独り言のように、そうだね、と呟いた。


…言い過ぎたかな…?


私がポジティブになればなるほど、きっと奈都はネガティブになる。


奈都、私に打ち明けてよ。


奈都の心の中、さらけ出してよ…。





忘れた英語のノートを取りに、奈都は学校へ戻った。


私はそのまま家に帰った。


「ただいまー…」


って、言ってもなぁ…


私の家は母子家庭で、お母さんは私のために忙しく働いてくれてる。


朝早く出ていって夜遅くに帰ってくる。


だから私は一人暮らししている感覚。


たまに、ほんとにたまに、日曜日は一日おやすみだったりするけど、年に指折り数えるほど。


だからちっちゃい頃は奈都と樹世の家に遊びに行ったり2人が来てくれたりしてたなぁ〜…


誰もいない玄関でひとり思い出してくすっと笑う。


あの頃は、なんにも考えてなくて楽しかったな。


今は…


部屋に駆け上がり、ベッドに倒れ込む。


暗くて寒い冬の部屋は、私の心の中みたい。


ごめんね奈都。


試すような真似して。


樹世のこと好きなくせに、隠すから…


少し意地悪しちゃった。


それなのに奈都は私のことばっか応援して…


私、嫌な人…


「ごめんね…」


涙まじりに呟いたその言葉は暗い部屋に消えた。

プリ小説オーディオドラマ